私の好きな短歌、その37
静にぞねむらせたまへ人間の命死にゆく時のをはりに
大熊長次郎、『大熊長次郎全歌集』より。(『日本の詩歌 第29巻』中央公論社 p239)
作者は結核にかかり、自殺した。その時遺書と共に残された歌のうちの一首。この時の一連の歌は、辞世の歌として穏やかながらも迫力を持つ。その中でもこの一首がおそらく最後の一首。我が生命ではなく「人間の命」とし、結句を「時のおはりに」としたことで、普遍的な意味を持った。この一首前(『日本の詩歌 第29巻』)に「何もかもゆるしたまへといのりつつわれの眼になみだたまれり」がある。これらの美しく悲しい歌を死の前に残すことができたというのは、作者が自殺を選んだ故であることがやるせない。
『大熊長次郎全歌集』は没後同年(1933年、昭和8年)に刊行された。作者生没年は1901年(明治34)ー1933年(昭和8)、享年33歳。
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