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私の好きな短歌、その34

寝るまへのこころすなほになりきたりふところに猫をいれてまくら

 筏井いかだい嘉一、『荒栲あらたへ』より。(『日本の詩歌 第29巻』中央公論社 p219)


 作歌当時の作者は、父を亡くし、母と二人で上京して、苦労の中にあったという。何かしら嫌なことがあっても寝る間際に猫が布団の懐に頭を突っ込んできて喉を鳴らし始めたら、いったん嫌なことは忘れて猫を撫でる、そういうことが自分にもある。それがよく分かるからこの歌が好きだ。
 下句がなんとなくゴロゴロして落ち着かない。がそこが上句の「こころすなほに」と通じているような気もする。

 『荒栲』は1940年(昭和15年)刊行。刊行時作者42歳。作者生没年は1899年(明治32)ー1971年(昭和46)、享年73歳。

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