私の好きな短歌、その8

ひとらに氷とぢたるみづうみに降り積める雪は山につづけり

 島木赤彦、歌集『氷魚』より(『日本の詩歌 第6巻』中央公論社 p42)。

 「冬の雨」中の一首。湖とは諏訪湖のこと。初句の「ひと平ら」、なかなか出てこない言葉だと思う。二句も出てこないのではないか。読むとなんの引っ掛かりもなくすんなり読めるが、私の中からは出てこない言葉だと思った。
 読みながら視界が足元から流れていき、彼方の山へと導かれる。読む人それぞれの胸の中に、景色がありありと浮かぶだろう。こういう歌を生み出してみたいものだ。

1919年(大正8年、44歳)作。作者生没年は1876(明治9)ー1926(大15=昭元)享年51歳。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?