私の好きな短歌、その36

受話器に友のいふこゑはうたがひなし三ヶ島葭子みかじまよしこの命おはりぬ

 大熊長次郎、『真木』より。(『日本の詩歌 第29巻』中央公論社 p236)

 端的に事実を述べた歌で心に響く。初句と二句の破調が気の動転を表しているようだ。「いふこゑ」も、「声」だけでいいものを「言う声」としてありやはり狼狽を感じる。下二句の単純さ、「命おはりぬ」と言い切ったことで無常感が醸し出された。ああついに、という無念が、単純な構成の一首で余すところなく言い表されている。三ヶ島葭子は当ブログ32首目で取り上げた歌人で、脳出血を繰り返し、42歳(数え年)で他界した。

 『真木』は1932年(昭和7年)刊行。刊行時作者は32歳。三ヶ島葭子は1927年(42歳)に没しているので、作歌時の作者は27歳。作者生没年は1901年(明治34)ー1933年(昭和8)、享年33歳。

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