私の好きな短歌、その1

 あ、いいなと感じた短歌を紹介し、簡単な評をします。いわゆる一首評。評をすることが、自分の実作の糧となってほしいと思います。
 まずは、中央公論社の「日本の詩歌 第6巻(島木赤彦、古泉千樫、中村憲吉、土屋文明、岡麓)」で見つけた歌から始めます。文中の作者の年齢は数え年。


中村憲吉『しがらみ』より(『日本の詩歌 第6巻 p195』)

たる負ひてはひる人あり小蓑こみのより乾ける土間に雪をこぼして

 「大寒」中の一首。中村憲吉の実家である蔵元での一シーン。樽には酒が入っているのだろうか。大寒、雪の降る外から入ってきた人の姿がありありと見えるようだ。二句切れによって、雪から逃れて屋内に入ってきた男が白い息をはき、まさに一息ついている「間」が表現された。普段の光景が、「乾ける土間」に零れる雪に焦点を合わせることによってドラマチックになった。1920年(大正9年、32歳)作。生没年1889(明22)-1934(昭和9)。

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