私の好きな短歌、その15

なまのままセロリきざみてかすにあへかをり高しとかゆすすりつつ

 岡麓、歌集『雪間草』より(『日本の詩歌 第6巻』中央公論社 p392)。

 「七面鳥」中の一首。下三句すべてが「か」で始まっている。それによってセロリの歯ごたえ、また独特な爽やかな香りが強調されているようだ。セロリは当時どのくらい普及していたのだろうか。定かではないが、おそらく歌の素材としては新しいのではないだろうか。作者はこの時73歳、前年中風で左半身が不自由となった。寝たきりではないようだが、そういう生活の中で歌の素材を見つけ、新鮮で匂い立つような歌を作っている。一首からは、病にあっても生活を、食を楽しんでいるひとときが伝わってくる。美味しそうな歌である。

 1949年(昭和24年、作者73歳)作。作者生没年は1877(明治10)ー1951(昭和26)享年75歳。

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