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岡麓の歌(「私の好きな短歌」より)

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2021年6月の記事一覧

私の好きな短歌、その14

みどり児のねむるつり籠つりかけし庭木の上を烏の飛びぬ

 岡麓、歌集『宿墨詠草』より(『日本の詩歌 第6巻』中央公論社 p365)。

 「夏日永し」中の一首。「みどり児」とは作者の孫。前の歌に「木のかげにつり籠(かご)つるし幼児(をさなご)の眠(ねむり)をまもる母はわが子ぞ」とあることから知れる。わが娘がその子、つまり孫を見守っているのを、父/祖父である自分が見守っているという、幸せな光景である

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私の好きな短歌、その13

雨乞の寺の鐘鳴りひびくなり白昼の如く月てりわたる

岡麓、歌集『庭苔』より(『日本の詩歌 第6巻 p330』)。

 次女茂子の夫の郷家のある備後地方の、「湯田村」と題された一連中の歌で、詞書に「今年の旱魃は三十年来の事といへり」とある。「雨乞」が新鮮。大正14年には寺で雨ごいがされていたわけだ。
 東京生まれの作者にとっては、備後湯田村は異国の地である。旱魃に苦しむ村で、月夜に響く雨乞の鐘を聞い

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私の好きな短歌、その12

私の好きな短歌、その12

外に行くと病み臥す母に告げにけり春の雨夜の宵しづかなる

岡麓歌集、『庭苔』より(『日本の詩歌 第6巻』中央公論社 p322)。

 何の用事の外出なのかは分からないが、分からないままであることがいい。この時の様子をただ述べている。事実をそのまま述べるだけで、そこから悲しみや不安、愛情などがにじみ出てくるということが、写生文学の素晴らしさではないだろうか。背景を完全に説明しないことで、読者それぞれ

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