山猫日記

三浦瑠麗。山猫総合研究所代表。代表作『21世紀の戦争と平和』、『シビリアンの戦争』。自…

山猫日記

三浦瑠麗。山猫総合研究所代表。代表作『21世紀の戦争と平和』、『シビリアンの戦争』。自伝的エッセイ『孤独の意味も、女であることの味わいも』、『私の考え』、近著に『日本の分断-私たちの民主主義の未来について』(文春新書)など、著作多数。

最近の記事

安倍元総理暗殺をめぐる日本の政治風景(2022/07/18)

安倍元総理暗殺を経た内外の反応 安倍元総理の暗殺から10日間の時間が経ちました。安倍さんに最後にお会いしたのは暗殺が起きる4週ほど前のシンポジウムの席でした。同時代の日本政治を論説してきた身として、それほど自覚はなくとも精神にダメージを受けるものであると再認識した10日間だったというのが偽らざる気持ちです。それでも、過去の経験を振りかえれば、荒んだ心を癒してくれる一番の特効薬は「時間」でしょう。一定の時間を経て、日本社会が安倍元総理の暗殺とどのように向き合っているのか記して

    • 衆院選:9党の党首討論書き起こし(ニコニコ生放送主催・10月17日19時半~)

      三浦 皆さん、こんばんは。三浦瑠麗です。 馬場 こんばんは。馬場典子です。 三浦 4年ぶりの衆議院選挙が今月末に行われます。政権選択選挙となるこの選挙は、私たちの未来にとって重要であるだけではなくて、やはりより広い国民の参加を必要としています。ぜひ明るい、わくわくするような選挙にしたい。そのための討論にしていきたいと思っています。本日は各党の党首の皆さまにお越しいただき、直接お話を伺うとともに、今、ユーザーが知りたいことなどを聞いていきたいと思います。 馬場 本日のネッ

      • 自民党総裁選2021候補者ネット討論会―ニコニコ生放送の全文

        9月18日19時~20時に行われた自民党総裁選候補者討論会の様子をお届けします。各候補者のさまざまな政策、価値観の違いが浮き彫りになりました。 三浦 皆さま、こんばんは。三浦瑠麗です。 馬場 馬場典子です。 三浦 本日は、自民党総裁選の候補者の皆さまに新型コロナの対応などをはじめ、今、ユーザーの皆さんが聞いてみたいことを直接ぶつけていきたいと思います。 馬場 候補者の皆さまをご紹介します。河野太郎、規制改革担当大臣。 河野 こんばんは。 馬場 岸田文雄、前政務調査

        • 野村明大解説委員への質問

          6月16日に野村明大解説委員(読売テレビ)がツイッター上において行った発信について、言及されている「文化人」と考えられる三浦瑠麗として、質問いたします。 野村解説委員(@nomurameidai)は、下記のようなツイートを6月15日にしました。 人流を減らしても感染者が減るわけではない…とかテレビで堂々と言ってしまう文化人がいて、もう啞然ですね… 人流を減らすことがベスト選択かは分かりませんが、感染者が減ることは“絶対”です。 言論の自由は大切ですが、この程度の人が公然と

        安倍元総理暗殺をめぐる日本の政治風景(2022/07/18)

          防衛大学校卒業式 来賓代表祝辞

          横須賀は、関東の中でも春が早いところです。本日は生憎の雨模様ですが、国家が緊急事態に直面し、それを乗り越えようとする中、今年の春の暖かさは、格別なものに感じられます。 防衛大学校を卒業し、研究科を終了される皆さまの卒業式にこうして列席し、お祝いのことばを申し上げる機会をいただいたことを、大変うれしく思います。また、ご両親ならびにご家族におかれましては、いつの間にか大人になってしまった我が子が、いよいよ陸や海、空へと旅立っていくことに、喜びや誇らしさとともに、万感胸に迫る思い

          防衛大学校卒業式 来賓代表祝辞

          3.11から10年。ゼロエミッションを考える

          3.11から10年が経ちました。あのとき私のお腹にいた子どもももうすぐ10歳です。あれから毎年、朝まで生テレビ!では3月11日を前に、震災とエネルギーについて語り合う企画を続けています。私も、7回ほど参加させていただいています。 ただ、日本では原発問題には関心が集まるものの、どうしても環境政策に対する関心が低く、活発な議論が行われない傾向にあります。先日も2月末の朝まで生テレビ!でエネルギー問題と原発問題を話し合いましたが、再エネ導入拡大に関する具体的な議論ができませんでし

          3.11から10年。ゼロエミッションを考える

          香港の運命

          (2019年8月2日) 本日は、香港におけるデモの問題を取り上げたいと思います。香港問題は、中国の問題を考える上で避けて通れない文脈を提供してきました。自由経済都市における自由という文脈を超えた、世界史的な意味合いについて考えたいと思います。 大型デモの背景と顛末 香港における200万人デモは、世界を驚かすものでした。香港は、人口700万人程度の街ですから、この規模のデモが行われるというのは人口の1/4近くが参加したということになります。最近でも、ロンドンにおいて、ブレク

          香港の運命

          「やせがまん」できなくなった社会―あいちトリエンナーレ問題を考える あいちトリエンナーレ問題

          (2019年8月7日) 過去1週間ほど、愛知トリエンナーレをめぐる問題がマスコミやSNSを賑わせています。多くの識者が発言をしているところですが、極々簡単に出来事の時系列を振り返っておきましょう。 話題になったのは、「表現の不自由」と名付けられ、過去数年の間に公共の美術展から排除された展示を集めた企画展でした。その中に、慰安婦像を髣髴とさせる作品、昭和天皇の御影を焼くという作品が含まれていたことで、反発が広がります。展示に対しては、一般国民から多くの抗議があったほか、河村

          「やせがまん」できなくなった社会―あいちトリエンナーレ問題を考える あいちトリエンナーレ問題

          トルコにおける”幸せ”な難民支援のかたち

          (2019年11月12日) 1年半越しのお約束を果たしにトルコへの弾丸出張に行ってまいりました。イスタンブール経由で乗り継いで、アンカラへ。 イスタンブールを以前に訪れたのは、テロが頻発した2015年より前の2013年春のことでした。それから6年半。思っていたよりもトルコは全然明るく、安全でした。トルコは成長のポテンシャルがあり、労働集約的な外食産業や加工業、製造業、建設業などがさかんな国。さまざまな問題はあれども、成長している社会特有の明るさが感じられます。 トルコは

          トルコにおける”幸せ”な難民支援のかたち

          死ぬなら一人で…論争に思うことーー川崎登戸殺傷事件&農水省元次官息子殺傷事件

          (2019年6月6日) 2件の深刻な殺人事件が起きました。細かく説明する必要はないでしょう。カリタス小学校の児童と保護者を襲い、犯人が直後に自殺した事件と、それに触発されたとおぼしき、家庭内暴力を振るっていた息子が世間に迷惑をかけないように殺害したと供述している農水省元次官による事件です。 ここで、人の手にかかって亡くなった方々のことを振り返ってみましょう。外務省職員の小山智史さん。ミャンマー語のスペシャリストで、カリタス小にお子さんを通わせている保護者でした。小5だった

          死ぬなら一人で…論争に思うことーー川崎登戸殺傷事件&農水省元次官息子殺傷事件

          LGBT差別や偏見の「理由は何でもよかった」のではないか

          (2018年7月27日) 『新潮45』に寄稿した杉田水脈衆議院議員のLGBTをめぐる意見が話題になっています。これまで、お上目線や自己責任論で福祉行政を語る保守派の政治家はたくさんいましたが、お上にはそれなりの威厳や打ち出しの高さも必要ですから、それとは毛色がだいぶ違うなという印象です。 かつて、「弱者認識の奪い合い」というブログ記事を書いた私ですが(『日本に絶望している人のための政治入門』文春新書、2015年に収録。)、最近のこうした言動などを見るに、かつてそこで述べた

          LGBT差別や偏見の「理由は何でもよかった」のではないか

          カバノー新最高裁判事をめぐるスキャンダルから学べること

          (2018年10月9日) 引退を表明したアンソニー・ケネディ氏の後任の米国連邦最高裁判事としてブレット・カバノー氏(53歳)が承認されました。ケネディ氏は保守派ではありましたが、どちらかというと穏健派。保守とリベラルで意見が割れる際にはリベラル側につくこともあり、多数決の帰趨を左右するような浮動票の役割を果たしていました。反対に、カバノー氏はバリバリの右派です。今回の人事で、最高裁は保守派多数が決定づけられました。 性的暴行疑惑 今回カバノー氏に関しては、36年前の事件の

          カバノー新最高裁判事をめぐるスキャンダルから学べること

          米国の勘違い―都合の良い同盟と覇権秩序

          (2018年6月1日) 同盟ただ乗り論のいま トランプ政権による北朝鮮の金正恩委員長との交渉が連日ニュースをにぎわす中で、ここしばらくの報道で浮かび上がってきたトランプ政権の東アジア観と、米韓同盟、日米同盟のリアルを考えてみたいと思います。 米国では、つい先日トランプ大統領が、金融規制緩和法案の署名の際、朝鮮半島有事の際は米軍の作戦行動の大部分の費用を韓国と日本が負担することになっていると発言しました。その報道を受け、日本国内では「本当なのか?」といった驚きが飛び交ってい

          米国の勘違い―都合の良い同盟と覇権秩序

          メディア「ムラ」は民主的に統制されるべきか?―高市総務相の放送法発言問題

          (2016年2月16日) 日本における言論の自由に対する懸念が強まっています。実際に、言論の自由やそれを支える報道の自由がより不自由になっているのかについては諸説あるでしょう。国会でも論戦になっています。国際的なランキングが万能とは思いませんが、国境なき記者団が発表する「報道の自由度」への評価が下がっていることは何らかの傾向値を示していると見るべきです。少なくとも、言論がより不自由になっていると「感じる人」が増えていることは間違いありません。そう感じる人が多いということは、

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          トランプ現象解題(2)ー意気揚々と撤退する米国

          (2016年3月25日) 笑えない課題 米大統領選の共和党予備選においてトランプ氏の快進撃が続いています。山場と言われた予備選を次々に制し、代議員レースにおいても他候補を大きく引き離しています。トランプ氏と共に、茶会党系のクルーズ上院議員と、穏健派のケーシック知事が予備選を継続していますから、まだ確定とまではいきませんが、トランプ氏の優勢はゆるぎないものになりつつあります。米メディアにおいて発せられる問いも、トランプ氏を止めるにはどうすればいいかというものから、トランプ氏が

          トランプ現象解題(2)ー意気揚々と撤退する米国

          トランプ現象解題ースーパーチューズデー決戦前夜

          (2016年3月1日) 決戦前夜 米国大統領選は決戦を迎えようとしています。これまで、民主・共和両党の候補者を決めるために4つの州で予備選挙が行われました。民主党はヒラリー・クリントン候補、共和党はドナルド・トランプ候補がそれぞれ3勝しています。現地時間の3月1日(火)は、これまでで最大の13州において投票が行われるスーパー・チューズデーです。大いに盛り上がってきた大統領選も前半最大の山場を迎えます。成り行きによっては両党の候補者が決定的となる可能性があります。 トランプ

          トランプ現象解題ースーパーチューズデー決戦前夜