“ヴェズーヴァの漂う者”はショーテル系デッキの強化たり得るカードか?
ヴェズーヴァの漂う者、とはどんなカードか?
ヴェズーヴァの漂う者は「機械兵団の進軍:決戦の後」で登場したカードだ。スタンダードリーガルのカードだが、“エピローグブースター”という商品名からも分かるようにかなり特殊なセットにあたる。コモンのカードが一種もなく、アンコモン以上で構成されたセットからの収録になる。
余談なのだが、英語では「March of the Machine :The Aftermath」と書く。Aftermathという単語は洋楽のRAPが好きな私には少々耳馴染みのあり、その響きが好きな単語だ。
話が逸れてしまった。本題に戻すとしよう。
今回のテーマは「ヴェズーヴァの漂う者はショーテル系デッキの強化たり得るカードか?」である。
新カード“ヴェズーヴァの漂う者”。レガシープレイヤーなら既にその名前を耳に、目にしていることだろう。当然効果を知っている方も多いことだろう。
とはいえ、これは紹介記事になるので折角であるから改めて紹介しておきたい。
なかなか面白い効果を持ったカードだ。加えて、3マナ、2/4 飛行 という基本のスタッツは十分に優秀であることも忘れてはいけない。
このカードのメインの効果は各戦闘開始時にデッキトップがクリーチャーカードであれば、それのコピーになれることにある。一見すると、これは強力なクリーチャーを多数擁するショーテル系デッキでは非常に有用な効果に思われる。
デッキトップが“引き裂かれし永劫、エムラクール”であれば一瞬でゲームを決めることが出来るし、“グリセルブランド”や“残虐の執政官”であればゲームを勝利に近づけてくれることは間違いない。
攻撃時に強力な誘発能力や、起動型能力を持つ大型のクリーチャーであれば、どんなクリーチャーのコピーとなってもそれなりに活躍をしてくれることだろう。
しかし、これはあくまでデッキトップがクリーチャーでさえあれば、ということだ。
いくらデッキトップを見る効果があったとしても、それほど都合良く行くものだろうか?
本当に強力なカードなのか?
レガシーにはデッキトップを操作できるカードが多い。
最も一般的に使われているカードは“渦まく知識“だろう。3枚引いて、任意の2枚手札をデッキトップに戻す・・・・・・デッキトップのカードは自由自在だ。
デッキトップの操作性では渦まく知識には到底劣るが、”思案“”定業“も優秀な部類に入るだろう。
また、青緑系のオムニならばピッタリのカード“俗世の教示者”や、アーティファクトには限定され、白を要求されるものの“悟りの教示者”で簡単にデッキトップを強力なクリーチャーにすることもできる。
こう考えると“ヴェズーヴァの漂う者”は簡単に強力なクリーチャーに変身することができるように感じ、ただちにゲームを決める強力なカードのように思われる。
だが、本当にそうだろうか?
実際に使ってみた結論から言ってしまえば、このカードは“やや強いカード”ということになる。そう、強力なカードではないのだ。
既にお気づきの方も多いだろう。このカードにはやはり欠点も多いのだ。
長所と短所
改めて長所と短所を並べてみよう。
◇長所
1.軽量なマナコスト
2.変身したデルバーに一方を取れる、高揚したチャネラーを受け止められる
3.稲妻で倒されない
4.デッキトップを常に確認できる常在効果
5.デッキトップの強力なカードのコピーになり、速やかにゲームを決める誘発効果
6.誘発は相手ターンでも発動する
7.“封じ込める僧侶”などのショーテル系に対するメジャーな各種対策カードが効かない
◇短所
1.“紅蓮破”“赤霊破”に対して弱い
2.除去耐性がなく、誘発に際して除去を当てられると無力
3.デッキトップがコントロール出来なければ普通のクリーチャーに過ぎない
4.コピーになった際、伝説であることもコピーするため”カラカス”に弱い
5.“渦まく知識”などでトップ操作をしても、“外科的摘出”“予報”などでデッキトップを変えられた場合、不発に終わる
6.“罠の橋”などは躱せない
こう並べてみると強い部分もたくさんあるが、目立った欠点も少なくない。
これら長所短所を総合すると、このカードは【やや強い】が妥当な判断だろうと考える。
ではこの【やや強い】カードである、“ヴェズーヴァの漂う者”はショーテル系デッキの強化たり得るカードか?
筆者の答えは、【YES】だ。
実際的な運用における評価
やや強いカードに過ぎない“ヴェズーヴァの漂う者”を何故筆者は「一線級だ」と言い切っているか。これには実際的な運用における有用性が高いことがあげられる。
ショーテル系のコンボデッキの欠点とは何か? それはコンボに軸足を置いていることで特定のキーカードを抜かれる、対策されることで簡単にゲームに負けてしまうことにある。
以前に紹介した“モンスター・マニュアル”は“実物提示教育”や“Eureka”だけに軸にしていた青緑系オムニテルに新しい軸を追加してくれた。
しかし依然として“封じ込める僧侶”などの踏み倒しを咎めるカードに対して欠点を抱えたままだった。
このカードはそれら踏み倒しを咎めるカードに対して間違いなく強く、擬似的なコンボカードを追加してくれている。これだけでも運用上は有用だ。
“実物提示教育”“騙し討ち”“モンスター・マニュアル”のような明確なコンボカードではないが、相手にとって“ヴェズーヴァの漂う者”が与える圧は決して無視できるものではない。
それは、“渦まく知識”などのデッキトップ操作カードを使わずとも、トップに偶然強力なクリーチャーがあるだけで簡単にゲームが決まってしまうからだ。
下手に放置すれば、ターン経過とともにそのリスクは増加していくことになる。
攻撃に回らずとも、相手ターン中に変身することで防御面でもキルターンを狂わせることができる。
さらに、変身せずとも2/4飛行 はアタックにもブロックにも一定の強みを持っている。
デッキトップを見る効果も馬鹿には出来ない。ドローソースを撃つタイミングや、フェッチを切るタイミングを確実なものにしてくれる。
こうなると相手はこのカードに対してカウンターや除去を切らざるを得なくなる。しかし、このカードに対してカウンターや除去を使ってしまえば後続の“実物提示教育”に代表される踏み倒しカード、出てきた強力なクリーチャーに対抗するカードが足りなくなってしまう。
これら実際的な運用においてはこのカードは相手プレイヤーへかける精神的なプレッシャーが大きく、間違いなく“嫌なカード”に分類される。
総合的に見てこのカードの本当の強さは単体ではなく、デッキの構造に対して重層的なメリットもたらすことにある。
これが筆者がこのカードを一線級と評価する理由だ。
採用枚数について
採用枚数については非常に悩むところだ。現時点での判断では2~3枚が現実的ではないかと考えている。
お試しで4枚採用してみたが、デッキの構成を歪めての採用だったのであまり良い選択ではなかったと思われる。
私は今まで青緑系オムニテルに3枚の“氷牙のコアトル”を採用していたが、この枠をそっくり“ヴェズーヴァの漂う者”に入れ替えることが良いのではないかと考えている。
“氷牙のコアトル”は隙を埋めてくれる潤滑油として非常に有用なカードであることは間違いないが、ゲームを決めるカードではなかった。
ここをゲームを決めることが出来る可能性がある“ヴェズーヴァの漂う者”にすることはデッキパワーを底上げすることに繋がると思われる。
ただし、デッキの総コストが上がってしまうこと、ドローソースが減ることによるデッキ全体の動きの変化については慎重に検討していく必要があるだろう。
総評
・単体でゲームに勝てる可能性があるカード
・変身せずとも一定の役割を持てるスタッツと常在効果
・運用上はゲームに重層的なメリットをもたらす
この3点から“ヴェズーヴァの漂う者”はショーテル系デッキの強化たり得るカードだと評価している。
今回は筆者が使っている”青緑系のオムニテル”を基準に話を進めていたが、“スニークショー”であればこのカードをより強力に使っていけるのではないかと思われる。
あるいはリアニメイト系のデッキに足してみるのも面白いかもしれない。
今後もしばらく“ヴェズーヴァの漂う者”を使ってみて感触を確かめていく。
新しい知見があった際には改めてnoteに書ければと思う。
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