猫山さん

素描のようなもの。作品ではありません。

猫山さん

素描のようなもの。作品ではありません。

最近の記事

自由律俳句もどき 16

突風何もかも吹き飛ばしてしまえ 七草粥母の料理の腕が衰え あなたの声は祖父に似ていて時々かなしい 十日戎雇い主の健勝を祈る 風邪薬を取りに行く土曜日 洗濯しながら風邪の養生 はじめて母親の手相を見た 苦い漢方を湯に溶かし啜る 風邪を振り切って遍路に出る 腹一杯の朝食再び遍路へ

    • 自由律俳句もどき 15

      食べないおせちばかりが残る一月四日 洛陽の友と珈琲杯を傾く 新しいおふだようこそいらっしゃいました 小雨底冷え灰色の琵琶湖 初出勤セーターが毛玉だらけ 写経しすぎた私の人差し指 インスタント麺ばかり食べると阿呆になる 喉が腫れたまま年を越した 自由律での相聞はちょっとシュール 君よ春になったら花を盗みに行こう

      • 自由律俳句もどき 14

        初夢は君のりんかく朧げに風邪を引きかけて苦い漢方薬谷町九丁目誰もいませんお坊さんだけがいる寺お守りをもらう街娼に間違えられる天王寺駅前煮しめと黒豆と雑煮だけの正月冬の雲今は君の影さえ踏めない琵琶湖空と水の色が同じ道開きの神よわたしの扉も開こうわたしは荒野の一本の木になって君を待とう

        • 自由律俳句もどき 13

          鍵を開ける私は自由 泥酔の夢何故か君の笑顔ばかりが浮かぶ 謹賀新年真新しい靴を下ろす 誰も拝まない古墳の神様を拝む 石室の岩を掴む木の根の力 願い事しない主義だがひとつだけ 短歌の誘い私は定型句など詠まない 初春や今日読む本は中沢新一 初詣群がる群衆の顔は醜悪 こんなにいい天気君はどこでどうしているだろう

        自由律俳句もどき 16

          自由律俳句もどき 12

          垢抜けない女の後ろ姿よ 部分日食猫は淋しくなどない 髪を染めるどんなに寒くとも髪は伸びる 年暮れぬあなたの顔が思い出せない 柔らかい皮膚私にもいのちがある 剥くと意地になるピスタチオの祭り 引きこもる新年古本の大人買い 夜の六時もう商店街は閉まっている 今年最後の電車それにしても近鉄は高い 酔っぱらって年を越す

          自由律俳句もどき 12

          something in the air

          朝が来ると神棚に天津祝詞をあげ、仏壇に般若心経をあげる。毎日欠かさず続けている。べつに祈願事があるわけではない。強いて言えば神仏への挨拶のようなもので、父が亡くなって、家で位牌を祀るようになってから、すっかり習慣になってしまっている。もう十年以上になる。 祝詞やお経をあげていると、時折不思議なことがある。声を出して読み上げている最中に、文字や映像が、眉間や胸の中に忽然と現れる。雑念かと思い消そうと思うが消えない。それはやけにはっきりしていて、読み上げが終わっても忘れることが

          something in the air

          猫は天使である 1

          生まれたときから、私の傍らには猫が常にいた。 まだ掴まり立ちもできない私と、大きな赤茶色の猫が、同じ布団で一緒に寝ている写真が一枚残っている。それが私と猫の関係を示す一番古い証拠である。 私の祖父は無類の動物好きで、私が生まれたときも「猫は利口だから、よく言って聞かせればわかる」と猫を隔離しなかったらしい。その当時、子供が生まれると猫を隔離したり捨てたりするのが普通だった。猫が赤子の顔の上に座って窒息死させるからと言うのがその理由だった。しかし、実際には猫を隔離しなくとも、

          猫は天使である 1

          自由律俳句もどき 11

          ギラついた極彩色の街を通り抜ける 仏教徒ゆえに今宵は何もなし 遠い国の異教の神に敬意を クリスマスの独りぼっちを嘆くな 鶏肉多すぎ死んだら鶏地獄に行くかも クリスマスの記憶は2回だけ 仏教徒のわたしにカードをくれた人 国をあげての勘違い空は星空 チョコレート子供のように食べている 夜が更けるコンビニのケーキは売れたかな

          自由律俳句もどき 11

          自由律俳句もどき 10

          十二月二十三日これから昼が長くなる 雨が止んでひりひりと寒い しあわせを連呼する歌やけに気持ちがよい 昨日煮すぎた南瓜を食べる 居場所のない小さなわたしを思い出す 砂糖菓子明日のことは考えない わたしには履けない美人のハイヒール 女を棄てる男の多いこと 仕事が手につかずぼんやりしている午後 あの広い背中に顔を擦り付けたい猫みたいに

          自由律俳句もどき 10

          自由律俳句もどき 9

          冬至私も引きこもります 冬至風呂柚子がないので檸檬を入れた 南瓜だけは調達しました 駅伝中継なつかしい地名を頭で辿る 雨宿り苦いコーヒー 雨降る冬至こもる陰の気 雨の中自分の足音を聞きながら歩く 商店街で買う生姜の天ぷら 狂い咲きの桜が雨に散る 返り花ずきずきと人好きになる

          自由律俳句もどき 9

          自由律俳句もどき 8

          経木の木目に墨が滲む 若い僧侶は読経が切れ切れ 経木に水をかけ南無大師遍照金剛 玄米茶おふだ干し梅お線香みかん竹炭今日買ったもの 白鷺が待ち受ける獲物は何 終い弘法もみくちゃにされ うどん一杯先祖と直会 石の牛赤い瞳がいとおしい 謎の通信挨拶だけ このまま年を越してしまうのかそれもまたよいのか

          自由律俳句もどき 8

          自由律俳句もどき 7

          本当に存在するならひきこもりたい月経小屋 御先祖様私は子孫を残しませんでした ブラインドの縞模様を飛行機が横切る 嫌がらせのように黒い服を着ている 香水くさいゲイの占い師が言うあんたたちは中学生並みだよ 手を伸ばしてはいけない人と相性がよいと言われても 占いの世界には奇妙な言葉がある両片思いなど初めて聞いた 既婚者との恋愛を大笑いで勧める占い師 二〇二〇年の予言私の恋愛運は狂い咲き 頑張ってねーと笑いながら占い師は私を見送る

          自由律俳句もどき 7

          自由律俳句もどき 6

          月経の痛み否が応でも生かされているしるし エロティックな夢を見て目覚める我清らかなり 元彼が入院したとの知らせ止まない雨 私はあなたの召し使いではありません 風呂場でかかとを削る新陳代謝 足の裏で猫を撫で回している 指先が冷えきるもうすぐ冬至 いい歳をしてぎこちない根比べ いくら星を読んでもあなたはわたしのものにならない もうまみえることはない忘れよう

          自由律俳句もどき 6

          自由律俳句もどき 5

          何のためにとも問わずに毎日を生きる 歳をとってひかりの季節が来た どうでもいいネイルを褒める昼休み 長い爪私はそんな女が嫌いだ 麺麺麺麺麺身体が麺になりそう 化粧しない女は不正解ですか そんなに楽しいかダイエットの話ばかり 換気扇の音同じことばかり考える 猫の恋は分かりやすくてよいなあ ずきずきする心もうどこかへ捨ててしまおうか

          自由律俳句もどき 5

          自由律俳句もどき 4

          どこまでも続くネットの上の影踏み まだ意地を張っている冬の朝 いのちあるものはすべて頑な 父の嫌いな納豆をわざと供える 暴飲暴食一人の夕餉 つまらない女噛み合わない会話 納め観音何も願わない手を合わせる 牛乳を溢したような白い猫 雨に濡れるあの花の名前がやっとわかった ありがとうイカれた俳句もどきを読みに来る人

          自由律俳句もどき 4

          自由律俳句もどき 3

          透明な花が絶えることなく贈られてくる 贈られた花に気づかぬふりをするわたし 見えない花は馥郁たる香りを放ち部屋を満たす 冬日がわたしの顔を照らす頬が火照る 表面張力はじけてひとつになる 化粧臭い女がぞろぞろ同じ顔 口紅を買う見せる人などないのに 神は残酷この組み合わせ 常緑樹自力で生きられる喜び 雑草の花手折るなと祖父がいう

          自由律俳句もどき 3