【自問自答】人から言われたキーワードについて考える：「癒し」とは

なんとなく引っかかっていることがあるので考えてみることにした。

「いっしょにいるときいつも癒されていた」
「その癒しの雰囲気が……」
「場にいてくれたことが癒しで……」

退職する際、複数の人から言われたワード、「癒し」。それと自分とが結びつかなさすぎて、すこし混乱した。
い、癒し……？？？？？
い……えっ……？？？（フリーズ）
とりあえずキャッチしたものの置き場がわからず、そのまま会話は進んでいったが、処理しきれなかったその言葉は両腕に抱えられたままなんとなく取り残されていた。
言われて嫌な感じはしなかったと思う。人からもらった「褒め」のようなものは褒めてくれようとした気持ち自体がうれしいので、その部分をありがたく受け取る方針である。
1人だけ、1回だけならそのまま流れていったかもしれない。重なったことで「おや？」となった。
たまたまではない？ということは、そういう要素が私にある、ということ？そうなの……？

「落ち着く」、言われる。まあわかる。
相手の話をうんうんと聞いている雰囲気とか？
「安心感」、言われる。まあわかる。
なにかあっても淡々と対応しているところとか？

この「落ち着く」や「安心感」の言い換えだとか、そのバリエーションとして「癒し」が選ばれたのだろうか？これまで言われたことがなかったのに、複数の人からそれぞれに？
何気なく放たれた言葉だったかもしれないし、最後だしなんかいい感じに言ってくれようとした結果にしても、なんだろう、やっぱり不思議だ。
なんせ相手はすべて職場の人である。仕事のときの私といったら、立場上堂々としていなければならなかったし、わりとはっきりとものを言うことが多く、ピリついて見えたり怖がられたりする要素のほうが多かったのではないかと自覚している。キリッと、ビシッと、カチッと、テキパキ、ハキハキ、キビキビみたいな擬音があてられてきた。

私が思っている「癒し」について挙げてみる。
擬音でいうなら、ほわほわ、ふわふわ、ゆらゆら、ぽかぽかみたいな雰囲気。きらきらも入るかも。
色なら、淡いピンクとか目に優しいグリーンとか、クリーム色、やわらかな白とか。ほのかな甘みがあって味が薄そうな色。おかゆ。
ゆるやか、まろやか。丸みとやわらかさ。おだやかであたたかな感じ。ひらがな。動物の赤ちゃん。きれいな空気。
そうだ、「癒し」はholyな印象が強い。清らか。なにかが回復しそう。白魔法、回復魔法。ヒーリング。浄化。落ち着くとか安心とかの一歩先、それによってなにかいいことが起こった状態、みたいな。

なにからなにまで真逆では……？かろうじて当てはまりそうなのは、見た目の丸みとやわらかさぐらいか。

自分で自分に言ったら？も考えてみる。違和感ワードというより欄外、やっぱりよくわからない。ここまで書いて「なんとなくその言葉は見ないようにしてきた」が距離感としてしっくりくる。

そういえば。自分ではつかわないようにしてきた言葉だ。だから受け取りかたがわからなかったのかもしれない。なんでつかわないようにしてきたんだっけ、と考えてすぐ思い当たったのがいつしかの母の言葉だ。

「なんでもかんでも『癒し』とか『癒される』とか、いやだわ、嫌い」
いっしょにテレビをみていたときだったと思う。うんざり、という調子で母が言ったのだ。芸能人に対しての「癒し系」だとか、動物やら食べ物やら場所やらあらゆるものに「癒されますね〜♡」みたいな表現をよく見聞きするようになったころだった。
母の言うことは絶対で間違いない世界で生きていたこどもの私は、ふーんそういうものか、「癒し」という言葉はつかわないようにしよう、ということになった。

私、「癒し」に「自己犠牲」のちらつきを感じている気がする。相手のために身を切って差し出す、みたいな。搾取されている、とか。なんだろうな、これ。
小柄でなんだか品よく柔和な雰囲気をかもしていた母はおそらく「癒し」に分類されやすいタイプで、その母が「自分が我慢すれば」「自分でやったほうが早いから」の人だったから、そこが全部つながってしまったのでは。

なんかもう……書いててｳﾜｧｰｯとなる。こういうの、すこしずつつぶしてきてはいるけど、きっとまだまだ私のなかに埋まっているのだ。

結局、どこに着地したらいいのかわからなくなってしまった。
私に向けられた「癒し」の真意はわからないが、たとえば慣れていない人がはじかれないように声をかけるとか、新人さんにも自分からあいさつするとか、場の雰囲気づくりのためにしてきたそういう行動の結果が「癒し」と言われたのであれば、それはそれでまあ悪くないなとは思える。
しかしやっぱり自分ではなかなかつかえない言葉だな。分類するなら「違和感」の箱に入りそう。要観察。
ほかにもこういうキーワードを見つけたら折を見て向き合ってみようと思う。