それでもブレーキディスクの大径化トレンドは進む
自動車の足元の大径化は、もう戻ることのできない絶対的ともいえるトレンド。軽自動車でさえ、15インチホイールを当たり前のように履く時代であります。
ホイールの大径化というのはブレーキの大型化とリンクしているというか、ブレーキディスクやキャリパーを大きくできるスペースを確保するためという説明を目にするところ。
そして、大径ブレーキディスクにするのは、テコの原理でホイール中心からの距離が離れるので云々という話を聞くことも少なくないでしょう。
ただし、テコの原理云々という話において、もっとも不思議な点は摩擦材のチョイスでいくらでも強められる制動力を得るために撥条下を重くすることを厭わないという、その姿勢だなあ、と思うこと仕切り。
そもそも大径ブレーキディスクが、制動性能を高める効果はあるのは間違いないのですが、テコの原理云々の話ではないよなあ、と思うのでもあります。
瞬間芸的なブレーキの効きでいえば、前述したようにパッドも含めた摩擦力で決まるわけですから、撥条下を重くする必要はないでしょうし、もっといえば、テコの原理で稼げるのはいかほどの制動力なのか、という問題もあり。
それよりも、ブレーキディスク大径化のメリットは、急激な温度上昇を防ぐためにディスク側の熱容量を増やすことが第一にあり、と思う次第。
すなわちディスクの大径化=重量増とすれば、単純に容量が増えているので同じ摩擦でも温度上昇がマイルドになるというイメージの話。もっとも、ベンチレーテッドディスクになると、内側のデザインも関係してくるので、そうした基本となる話だけでは判断できなくなりますが。
さて、ここで話は戻ります。では、なぜにブレーキディスク大径化のトレンドが絶対的で、後戻りすることないと考えるのか。
それは、ブレーキの容量への要求がどんどん高まっているから。
これまで、ブレーキというのは減速時にのみ使う構成パーツといえました。しかし、いまは違います。
ESCなどと呼ばれる横滑り防止装置は、基本的に四輪のブレーキを独立して作動させることで車両の姿勢を制御します。つまり、ドライバーがブレーキを使っていないつもりでも、車両がESCを作動させていれば、ブレーキは使われています。とくにリアについては、これまで以上に容量が求められる印象。
そうなると一瞬の効きではなく、ブレーキの容量を増やすことが必要条件となりますから、必然的にブレーキディスクは大径化(厚みアップも含め)することになるというわけ。
であれば、ブレーキディスクの大径化というトレンドは、スポーツ性能だけではなく、安全性を確保するために必要な進化であって、よほど置換できる素材が出てこない限り、大径化のトレンドは加速することがあっても、止まることはないだろうな、というのが2014年夏段階での印象なのでありました。
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