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フィーリングでエンジンを評価するナンセンス

クルマのインプレッションで、とくに市街地でのチョイノリであればあるほど、出足の良さなどエンジン(パワートレイン)の第一印象が大いに影響してくる傾向にあると思いますが、そうした運転した感覚で、エンジンの良し悪しを語ること、判断することに意味があるのかといえば非常に疑問。

たとえば、インプレッションにおいて、次のような文言を目にすることは多いでしょう。

「このエンジンは最大トルクを1250rpmという低回転から発生している。だから、出足が鋭いのだ」

こうした表現を目にすると、まるで1250rpmで常に最大トルクを発生しているように錯覚してしまいますが、勿論そんなことはありません。アクセルオフでは燃料カットしていますからプラスのトルクは発生していませんし、そもそもエンジン性能曲線が示す数値はアクセル全開状態でのそれ。

いまどきのバイワイヤ接続されたスロットルを持つクルマでは、アクセルの踏みっぷりと実際のスロットル開度がどこまでリンクしているのかもわかりませんし、条件が整ったアクセル全開状態でもなければ、「このエンジンは最大トルクを1250rpmで発生。この加速は、その最大トルクのおかげだ」などとは判断できないわけ。

もちろん、低回転でトルクを発生できるようなパッケージであるから、発進が鋭くなるという関係にあることは否定しません。ですが、「このエンジンは最大トルク400Nmを1250rpmで発生する。それだけにロケットのような加速を示す」と、まるで実際のドライビングにおいて最大トルクを発生させているかのような表現をしてしまうのは疑問ですし、仮に市街地でアクセル全開にしているような非ジェントルな走りをしているのであれば、それはそれで残念。

そして、ターボエンジンではリアルワールドではアクセルの踏み始めにターボラグと呼ばれる反応遅れがあるはずですが、それも性能曲線では見えづらいのは、負荷のかかり方が異なっているからという面もあり。

エンジンベンチでなく、タイヤでドラムを回すシャーシダイナモにしても、実際に計測シーンを見たことがあればわかるように、低速ギアでドラムを回しながら、直結ギア(1.000のギア、4速か5速)で低回転からアクセスを全開にするという日常的にはあり得ない走行モードで計測しているのでありますから。

リアルワールドでの発進時というのは低いギアで、かなり減速した状態で駆動しています。直結ギアでの判断ならともかく、こうして減速した状態でのトルク感というのはギア比にも関係する(むしろギア比の影響が大きい)話。すなわち、この状況で発進フィーリングでエンジントルク感を云々するのは、あまりにもナンセンス。パワートレイン全体として「力強い、トルクを感じる」という書き方であればエンジン特性とギア比をトータルで表現してますから意味があるとは思うのですが……。

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