VWが軽自動車らしきものを作ったら……

いわゆる自動車メディアでは試乗記というのがメインコンテンツになりがちですが、実を言うとここ数年ほど試乗記らしい試乗記は書かないようにしております。

所詮ちょい乗りで書いた試乗記はナンセンスという指摘は、そのクルマのオーナーをはじめ、ネット界隈から言われるところで、そうした流れを受けて試乗記にニーズがないだろうと思ったのが、書かなくなった理由。不思議なもので、そう思うと、試乗記らしい試乗記のオファーもなくなるので、自然と試乗記を書く機会も減っていくのでありました。

そんなわけで、いわゆる商業メディアでは書かなくなった試乗感想文。あえて超短時間・短距離での感想をここで書いてみようと思う次第。


第一回は、距離にして5km、時間にして10分程度動かしただけの、こちらのクルマの感想を。

フォルクスワーゲン(VW)の「アップ!」であります。

このクルマ、コクピットドリルなしでエンジンをかける段階で、あたふたしてしまうのですが、変速機がASGと呼ばれるAMT(ロボタイズドマニュアルミッション)の関係で、いわゆるATにおけるP(パーキング)レンジがなく、駐車時にはR(リバース)かD(ドライブ)に入れておくのが基本。

そのため、エンジンをかける前にシフトレバーを操作してN(ニュートラル)位置にしておかないとセルが回らないのでありました。

そうして走り出して、2回ほどシフトアップしたところでの感想は……


「あー、VWがDSG(デュアルクラッチトランスミッション)を作らねばと思ったのは必然だなあ」


というものでありました。

記憶に残っているAMTといえばアルファロメオ156のセレスピード、ルノー・トゥインゴあたりですが、第一印象でいうと、アップのASGはそれらと変わらない出来というか、10年以上の時間が経過した進化が感じられないというか。

ともかく、タウンスピードでのシフトアップではギクシャク感ありまくり。日常的にDSGのザ・ビートルに乗っているからの比較かもしれませんが、個人的には許容範囲外のドラバリであります。

シフトアップのタイミングでアクセルを抜くなどすればいいのですが、クラッチをつなぐタイミングをカラダが覚えるまではギクシャクは避けられないでしょうし、そうしたドライビングスキルをユーザーに求めるのはグローバル展開する商品としては疑問。このギクシャク感を解消しつつ、CVTやステップATの伝達効率は許せないとするメーカーだとしたら、そりゃあDSGにリソースを集中させるなー、と違う意味で納得であります。

とはいえ、AMTの美点といえるシフトダウンの軽快感には、まったく不満はなく、ブレーキを踏みながらのシフトダウンはマニュアルでも、クルマ任せでも違和感なく、自動的に回転をあわせてくれる気持ちよいものではありましたが。

そしてエンジン。


こちらは排気量なりのトルク感というか、軽自動車が660ccであのトルク感を出しているあたりと比べると、排気量にしては控えめな印象もあり。逆に、このエンジンであればASGよりもトルコンを使ってチカラを増幅させるトランスミッションのほうがマッチしそうという印象。


それよりも気になったのはエンジン由来の振動で、3気筒感バリバリ。日本におけるVWブランドにふさわしいものではなく、あくまでもVWが軽自動車的なコミューターとして割り切ったクルマを作ったのだなあ、と実感なのであります。

価格的に、また国内においてはドイツ車というブランドイメージで「小さな高級車」的な要素も求めてしまうかもしれませんが、少なくとも5分ほど乗った印象を一言でまとめれば……

「フォルクスワーゲンが真面目に作ったミラ、アルト」

という感じ。真面目に作ったというのは、ミラやアルトといった軽自動車のようなシティコミューター的な商品として、その要求性能をしっかりと見極め、ニーズに100%応えたな、という意味。

もちろん、国内の軽自動車とはニーズも違うでしょうから、高速走行すると違いが出るのかもしれませんし、軽自動車と同じレベルの出来という意味ではありません。

シンプルに、とくに付加価値を加えることなく、道具として真っ当なものを目指したのだろうな、という感触を受けた5分間のドライブ。

5分で感じるところといったら、このくらいです(汗)


[2014.6.18 全文公開・投銭タイプに変更しました]


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