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ユネスコ無形文化遺産【山北のお峰入り】/専門家「他にはない、貴重な事例」/10月8日開催/その特徴は?

昨年11月にユネスコの無形文化遺産に登録された民俗芸能「風流踊(ふりゅうおどり)」の一つで、神奈川県山北町の共和地区に古くから伝わる「山北のお峰入り」への理解を深めようと、このほど町内で講演会が開かれた。講師を務めた東京文化財研究所の久保田裕道氏は「旧共和村の人たちが役割を分担して続けてきた祭り。他にはない、貴重な事例だ」と強調した。今年10月8日に6年ぶりに開催されるこの民俗芸能の特徴とは?久保田氏の講演内容と、お峯入り保存会発行の記念誌などを頼りにまとめた。(※指定名は「お峰入り」だが、地域住民は「お峯入り」と表記している)

「山北のお峰入り」のフライヤー

700年の歴史

「風流踊」は、衣装や傘などの持ち物に華美な装飾を施し、笛や太鼓などの囃子に合わせて踊る民俗芸能で、国内各地にさまざまな形態のものがある。
ユネスコは昨年、国指定の重要無形民俗文化財である41件の「風流踊」を無形文化遺産に登録。この中に「山北のお峰入り」も含まれた。

記念誌によると、「山北のお峰入り」は1955年に山北町に合併した旧共和村に約700年前から伝わるとされ、最も古い資料は1863(文久3)年の公演記録が残っている。開催は不定期だったが、1995年の保存会総会で「演技の公演は、原則として5年を目途として実施する」と決められ、これまでに20回分の記録がある。

演技は8演目あり、天狗、獅子、おかめ、山伏、太鼓、笛などの役を約80人の男性が演じて行列をつくる。それぞれの役は共和地区内の各地域が分担して継承してきた歴史があり、久保田氏はこの点を「たくさんの地域がそれぞれの役を守って、長いこと続けてきた。しかも毎年ではなく年を開けながらずっと続けてきたというのはお峰入りの大きな価値ではないか」と評価した。
ただ、近年では人口減少の影響で地域外からの協力を得て演者を集めているのが現状でもある。

「傘」に神様が降りてくる

久保田氏は、「風流踊」の一つの特徴として、「傘」の存在を挙げた。
「なぜ傘があるかというと、傘に向かって神様、精霊が降りてくるという信仰がある。風流踊は悪いものを追い出すためのお祭りのなかで踊られたりする」という。

「お峰入り」でも「傘」のような特徴を持つ装飾が見られる。中でも目を引くのが、色鮮やかな「万燈(まんどう)」。今年10月の公演で使われる「万燈」は、地域住民が約1年前から製作に取り組んできた。

色鮮やかな装飾が施された「万燈」

山岳修行と富士信仰

町のホームページによると「お峰入り」とは山中で修行を行うことを意味し、修験道の儀礼が芸能化したものと考えられる。また、南北朝時代に宗良親王が町内にある河村城に難を逃れた時から始まったという伝承もある。

記念誌では、共和地区について「かつては丹沢一帯に信奉されていた修験者の山岳修行の行場であり、又、富士信仰につながる伝統が保持されてきた土地でもあった」と紹介。
八つの演目の中には山伏が登場する「修行踊り」や、修験道の行場の「伊勢」「鹿嶋」「熊野」の地名が歌われる「鹿枝(かしえ)踊り」、「地にひそむ邪鬼や疫病神の逐放、または地霊を賦活(ふかつ)する」意味があるとされる「棒踊り」などがある。これらは全て口承で引き継がれてきたとされる。

「歌舞をあやなすお峯入り」

旧共和小学校の校歌

歌舞をあやなすお峯入り 伝えてここに六百年」ー。
2010年度末で閉校した共和小学校の校歌にはこんな歌詞がある。

厳粛なるもの 静かなるもの 華やかで、滑稽で そして幾何学的なるもの」。
冒頭に掲載したフライヤーは、「お峰入り」をこのように表現している。

記念誌には「県下最小の村に県下最大の祭り」ともある。

過疎化が進む共和地区。6年ぶりの開催に向けて、山あいの集落に笛や太鼓の音が響く。
祭りの準備が活発化している。

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