ヤマト2

ヨガを始めたブルーノとヤマト。ポーズ三つか四つ目の時。
「駄目だ、今日はもうやる気がでないし、それにおなかが空っぽだ」とブルーノ。「今すぐ食べに行こう」
「そうしよう」ヤマトは即答したが、内臓、特に胃から腸にかけてが未だに怠くて鬱陶しかった。日本の家の道路を挟んだ、対岸にはベガーンレストランとケバブ屋が住宅を挟み、並んでいる。
三か月前にゆっくりとコロナと共に始まったベガーンレストランに二日前に出来たケバブ屋。その中間に位置する日本の家。このブロックもまた人が集まる場所になる予感が薄くヤマトにあった。
その新しくできたケバブ屋にブルーノと歩いて行った。一時前、ドイツの一つの通り、風が吹き木が揺れる。葉がゆさゆさと揺れていた。

スリグが約二十年前からの友達を連れて大和の前を歩いている。マフィアの車がバリバリとエンジンを鳴らしながら走り去っていく。夜七時前、スリグの名前を呼ぶ声で起きたヤマト。ベットの周りに散らかっているジョージア語のプリントとノート。窓から顔を出すと自転車に跨るスリグとその友達。
「そこにご飯食べに行くぞ」とスリグ。
すぐ降りるとスリグに言い、服を着てサンダル突っ掛け階段を二段飛ばしで降り外に出る。
「こんにちは。元気?」とヤマトはこぶしを突き出す。
「俺は元気や、お前は?」とスリグは突き返す。友達さんとも挨拶。
「ちょっとゆっくりして、腹空かせてから行こう」とスリグ。
夕焼け色の空にカラカラの風が吹く日だった。
開店初日のケバブ屋にスリグと友達さんと一緒に行く。
ケバブをヤマトは食べ、スリグと友達はトルコのピザを食べていた。「辛いけどうまいぞ」スリグは言った。ヤマトはスリグの皿から一口貰う。しし唐も一齧りする。
ヤマトは口がピリピリする感覚をそのまま胃袋で処理しようと飲み込んだ。それでも未だにヒイヒイとヤマトは痛そうに小さくもがいていた。

ブルーノがうるさくヒイヒイと息を吸い込んでいる。対面に座るヤマトは平気だった。目の前でこんなに苦しまれるとヤマトの痛みも消えてしまった。二人はスリグの好きなトルコのピザを食べていた。二枚ずつ彼らは食べた。
日本の家に帰り、茶をくれとキッチンに水を駆け足で飲みに行くブルーノ。ゆっくり茶を作り始めるヤマト。ピリピリとした感覚が胃にあった。
それでも茶を飲みながら、煙草を吸っていた。木曜、ご飯会の日。
何を作ろうかで頭を悩ませていた。

十時頃、通りの街灯がようやく灯り、通りを橙色に染め上げる。スリグも最近買った新しい自転車を漕いで帰っていく。小柄なスリグとでかい自転車が消えていく。

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