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複雑な世界だから根本的な価値観を大切に

So I want our young people to continue to learn and practice those values with pride. You see, our glorious diversity — our diversities of faiths and colors and creeds — that is not a threat to who we are, it makes us who we are.

【訳】今、若い人たちには、これらの価値をプライドをもって学び続け、実践して欲しい。我々の素晴らしい多様性を。様々な信仰があり、人種がいて、思いがあるということ、つまり多様であるということは恐怖ではなく、我々が今こうしている基盤なのだということを。(Michelle Obamaのスピーチより)

【ニュース解説】

新年です。今年も頑張って世界の情勢の解説を続けたいと思います。いつも読んでいただき心から感謝します。皆様にとって良い一年でありますように。

オバマ政権はあと数日で終わります。

これから先の見えにくい未来に向けて、多くの人が不安を抱いています。人類は、未来を予測できないまま、過去に何度も大きな試練にさらされました。

ちょうど100年前の1917年は、世界は第一次世界大戦の真只中でした。そして、その年にはロシア革命がおこり、世界初の共産主義政権がお目見えしました。

それから100年の間に、世の中は大きく変化しました。

我々の未来をみたときに、我々がこの情報社会をどうマネージしてゆくかという課題を突きつけられています。

アメリカでは、情報社会特有の二つの課題で社会が揺れています。

一つは、正月早々にマスコミを騒がせているロシアのアメリカへのハッキングの問題です。ロシアがアメリカの大統領選挙をロシアに有利に誘導しようと意図的にウイキリークスなどを使い、民主党側の情報を漏洩した証拠をアメリカの諜報関係の高官が公聴会で証言したのです。

CNNなど、海外のメディアはその証言の模様を特別番組で中継し、ロシアの反応、さらに選挙を有利に進められたトランプ次期大統領のコメントなども添えて、今アメリカの政治がさらされている情報管理の課題について大々的に報道しました。

特に、60年代からずっとアメリカの軍と諜報畑で活躍し、オバマ政権の元でアメリカの諜報活動を統括する国家情報長官Director of National Intelligence として勤務してきたジェームス・クラッパー James Clapper 自らが、ロシアによる選挙妨害の実態を明言したことは衝撃でした。

そして2つ目の課題は、トランプ次期大統領の情報へのアプローチです。

元CIA長官のレオン・パネッタ Leon Panetta が記者会見で、トランプ次期大統領のツイッターの使い方を批判しました。彼曰く「トランプ氏は twitter で自分の感情をそのまま即座に人々に伝えている。これは複雑な内外の情勢を統括する大統領の行為としては、あまりにも配慮に欠けるもの」。

トランプ氏が大統領に選ばれた理由の一つに、人々の既存の政治への嫌悪がありました。ソーシャル・メディアで自分の気持ちをあからさまに伝えたことが、人々に新鮮に映ったことは事実です。

しかし、トランプ氏は世界の超大国アメリカの次期大統領です。その彼が語る一言一言がアメリカのみならず、世界にどれだけの影響を与えるかということを考えれば、その時の感情で思いついたことをオープンに語ることの危険さがないとはいえません。実際、マスコミも、報道陣へ発表せずに、さらりとツイッターで政治的な発言をするトランプ氏の手法に戸惑っているのです。

ソーシャル・メディアは、情報の真偽に関係なく、人々がその影響を受けてしまいます。その結果世論も動揺し、思わぬ方向に人々の思いが誘導されるということが、今世界中で起こっている問題です。

2017年はアメリカでもヨーロッパでも政治状況が大きく変化する年です。耳に心地の良い誘導や扇動にソーシャル・メディアがますます活用されるようになりそうです。それにどのように対応するか、これは我々の近未来を考える上で、最も重要な課題なのです。

そうした不安定な未来に直面した今、ホワイトハウスを去るオバマ大統領の婦人ミッシェル・オバマが、自らが取り組んできた教育関係の集会でお別れの演説を行いました。ヘッドラインで紹介している一文はその中で彼女が語ったことです。

私は、これが今後の世界情勢を考える上で、最も原点的なビジョンとして心に刻み込んでおかなければならないことではないかと思ったのです。

というのも、今世界中の宗教や多様な文化に我々がどのように接してゆくべきかという根本的な問題をめぐって世界が揺れているからです。

ソーシャル・メディアで煽られがちな、イスラム教や異なる人種への偏見、身近なことでいえば、日韓や日中での感情的な対立に直面したとき、彼女のこの一言を思い出し、心に刻む必要があるのではないでしょうか。

特に多様な移民のパワーによって大きくなったアメリカ社会では、今後も貧富の差や人種の問題に起因した対立が深刻になるはずです。ミッシェルはそのことを念頭におき、ホワイトハウスを去る前に、このスピーチをしたのでしょう。

今年は、日本も含め、世界が大きく動く年のように思えます。それだけに、世界の情勢や人々の動きにより目を向けるように心がけたいものです。

我々としては、こうした世界の動きに接して、海外の人と共通の話題を持ち、その中で自分の意見を語れるように、例えば日本の英語学習のあり方などの教育の課題も含め、いよいよ真剣に考えてゆく年にしたいものです。

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