うるさい　

うるさい

ここ最近、テレビをつけてもラジオをつけてもやっているのは同じ話題ばかりだ。どうやら正体不明の寄生虫が発生しているらしい。

ただでさえ親がわずらわしいというから現実逃避しようと思っても、興味のない虫のニュースしかやっていない。だから最近はイヤホンを耳にぶち込んで、割と気に入っている曲を無限ループしている。

「世間を恐怖で震わせる寄生虫について新たなる情報が明らかになりました。色は赤色であり、一つの個体の大きさは人間の目には見えないほど小さいとのことです。また集団で動く特性があり、タイミングを合わせて攻撃を仕掛けてくるそうです。政府は、、」

またこのニュースだ。もううんざりする。俺はテレビを消した。

「ちょっと、どうして消すのよ！久々に部屋を出てご飯食べてると思ったらねぇ！そんなことよりあんた就職は？」

「うるさい」

うるさいうるさいうるさい
親も世間もうるさい。心なしか周りの音が前より大きく感じる。そんな気分に俺に寄り添ってくれるのはイヤホンから流れるこの曲だけだ。ずっとこの曲を聴いていたい。睡魔が来て、灯りを消した。

「プス」

耳にチクリとした痛みが走って、イヤホンを外した。灯りをつけるとイヤホンにはなにやらBB弾くらいの大きさの赤い塊がついていた。

俺が最期に聴いた曲になった。