yamakspapa(山川茂孝)

マーケティング&ビジネスアナリティクスコンサルタント。ダイレクトマーケティング、デジタ…

yamakspapa(山川茂孝)

マーケティング&ビジネスアナリティクスコンサルタント。ダイレクトマーケティング、デジタルマーケティングを中心に、データを起点としたビジネス改革、新サービス・新商品ローンチプロジェクトを数多く手掛ける。(株)ヤマックスラボ、代表。Ph.D.(経営学)

最近の記事

ECのギモン(10)脱サードパーティークッキーで原点回帰するEC

アドテクノロジーの多くは、サードパーティークッキー(以下、3PC)を通じて収集された消費者の行動データに依拠していました。その3PCが今無くなろうとしています。Appleの標準ブラウザであるSafariは既に3PCをブロックしており、GoogleのChromeもまもなく3PCは使えなくなります。[1] EC事業者にとっては見込み客の判別が難しくなり、集客の効率低下が懸念されています。 3PCはなぜ消費者に嫌われたか?ECにとって効率的に集客することは最重要課題の一つです。集

    • ECのギモン(9)一斉値引きクーポン依存症からの脱却

      最近のECカート(ECシステム)にはいろいろな機能がデフォルトで付いていて、とても便利です。様々な割引が可能なクーポンもいつでも使える状態になっていて、とても便利です。 クーポンは顧客セグメンテーションの一つの方法クーポンは「値引きの一種である」というのは嘘ではないのですが「お客さん全員へ割引をするわけではない」というところでは本質的に異なる手法です。 そもそもクーポンを使うためには、お客さんに手間がかかります。ひと昔前のアナログの時代には、クーポンを使うためには、チラシ

      • ECのギモン(8)MMMとEC

        最近、MMMという言葉をよく耳にします。と言っても広告業界での話ですが。Marketing Mix Modeling(MMM)は2000年から2010年頃に企業のマーケティング・ミックスを最適化する手法として盛んに活用されてきました[1]。その後、マーケティングがデジタル化されるとともに、あまり聞かれることがなくなっていました。 MMMリバイバル先日、博報堂DYグループがMMMのハンドブックを公開した、というニュースが飛び込んできました[2]。Google Japanとの協

        • ECのギモン(7)新型コロナはECに何をもたらしたのか?

          先月、毎年恒例となりました、経済産業省の「電子商取引に関する市場調査」の結果が発表となりました。この調査では2022年の日本のECの状況についてまとめられています。2022年はコロナ禍からの経済の回復期にあたるため、どのようなことが起きているかを考察することは、今年、来年を予想するためにも役に立つ思われます。 EC全体ではコロナ特需は収束も、成長は続くコロナ禍の影響が直撃した2020年、ECの世界ではプラスとマイナスの両方の影響が大きく現れました。プラスは「物販系通販」の伸

        ECのギモン(10)脱サードパーティークッキーで原点回帰するEC

          AIDMAか?ダイレクトレスポンスか?~「日本の広告費」に見る産業構造の変化~

          「日本の広告費」は電通が毎年発表する日本の広告統計の一つです。今年75周年を迎え、日本の広告の歴史を知る上でも貴重なデータとなっています。この「日本の広告費」は電通のウェブサイトでも約10年分が掲載されており、無料で閲覧することができます。 ブランド認知は今でも重要なのか?広告がどのように機能するかを説明するために、AIDMA(アイドマ)という認知モデルが古くから使われてきています。AIDMAは、Attention(注意)、Interest(関心)、Desire(欲求)、M

          AIDMAか?ダイレクトレスポンスか?~「日本の広告費」に見る産業構造の変化~

          ECのギモン(6)ECではトリプルメディアは戦略ではなく日常である

          十年ほど前、ソーシャルメディアが台頭してきたころ、トリプルメディアという言葉が流行りました[1]。それまでは広告(ペイド)と自社サイト(オウンド)がほとんどでしたが、そこにソーシャルメディア(アーンド)が入ってきたのです。マーケティングのプランニングも当然変わってきます。当時はトリプルメディアを組み合わせてコミュニケーションを組み立てることを、トリプルメディア戦略と呼ぶこともありました。ちなみに、トリプルメディアというのは日本語だそうで、英語圏ではPOEM(Paid, Own

          ECのギモン(6)ECではトリプルメディアは戦略ではなく日常である

          ECのギモン(5)自社ECするなら季節を味方につけるべし

          ECを始めるときに毎度出てくるのが、モールに出店すべきか、自社のECサイトを立ち上げるか、どちらがいいのか、という疑問。かつては、自社ECは立ち上げ・運用のコストの負担が大きいと思われていましたが、最近ではBASE、Stores、Shopifyといった小規模から安価にECサイトを構築できるサービスも出てきましたし、システム関連コストだけで判断することは少なくなってきたように思います。むしろ、集客・リピートの施策が課題になります。 テナント?路面?リアル店舗を例に自社サイトの

          ECのギモン(5)自社ECするなら季節を味方につけるべし

          ECのギモン(4)F2転換を促すMA設計、いやその前に

          ECでは二回目の購入がとても大切。購入頻度(フリークエンシー)2回目、ということで、F2転換ともいわれています。通常、ステップメールやより高度なシナリオを組むことができるマーケティングオートメーション(MA)ツールを使って顧客とコミュニケーションを取ります。 最初の配信はいつがいい?ステップメールやMAのシナリオの設計でまず問題になるのが、メッセージを送るタイミングです。電子メールはコストが安いので、タイミングや配信本数は気にならないかもしれませんが(月額固定のツールも多い

          ECのギモン(4)F2転換を促すMA設計、いやその前に

          ECのギモン(3)通販・ECは伸び続けている、だが、どこまで?

          今年の『情報メディア白書』(ダイヤモンド社)はとても面白い。コロナ禍を通じて目まぐるしく変化した情報メディア業界の総括的な位置づけとなっていて、少々高い本ではあるものの、購入する値打ちは十分あります。通販・ECについては、他にもいろいろレポートがありますが、「通販・ECの告知経路としてのメディア」についてはこれだけまとまっている情報源は知りません。 例えば、BSの年間CM出稿量、1位富山常備薬、2位チューリッチ保険、3位サントリー…、折込チラシは読まない、50代59.3%、

          ECのギモン(3)通販・ECは伸び続けている、だが、どこまで?

          ECのギモン(2)OMO,O2Oの失敗は組織の問題が9割

          オムニチャネル化に欠かせないEC機能店頭ピックアップやネットスーパーなど、コロナ禍を通じて様々な店舗&EC連携サービスが登場しました。オムニチャネル、OMO (Online merges with Offline)、O2O (Online to Offline)など、連携の方法などによってさまざまな呼び方がされていますが、ユーザーの視点からはシンプルに「お店のEC化が進んだ」と見えているのではないでしょうか。 ただ、使い勝手はサービスによってまちまち。一体何のためにEC作っ

          ECのギモン(2)OMO,O2Oの失敗は組織の問題が9割

          時間と空間のマーケティング分析(3)~商品の置かれている「場所」をどのようにとらえるか?~

          前回は、GPSやビーコンを用いて得られる位置情報のデータについて解説しました。これらのデータは主に消費者の行動を把握するためのデータでした。マーケティングでは、消費者だけでは商売は完結しません。商品についても「場所」を把握してこそ、初めてマーケティング施策が成立します。今回は、この「商品」の「場所」を把握する考え方、データについて見ていきたいと思います。 商品の場所取りの階層構造とデータの限界自社の商品を売ってもらう場所を確保する、というのは案外難しい作業です。メーカーの立

          時間と空間のマーケティング分析(3)~商品の置かれている「場所」をどのようにとらえるか?~

          ECのギモン(1)~商品ラインナップはどう増やしたらよいのか?~

          単品で戦いにくくなった通販・EC業界つい最近まで、通販と言えば単品リピート通販が主流でした。通販でしか買えない商品を定期コースで購入するスタイルが、なんとなく通販を含む無店舗販売の基本形となっていました。そのため、通販企業は初回無料・半額といったオファーを提供し、消費者を定期顧客へ誘導します。 しかし、最近では通販でしか買えないというものも少なくなり、ほとんどのものは巨大なECモールや流通のネットショップでも手に入ります。わざわざ定期コースに入らずとも、欲しい時に購入すれば

          ECのギモン(1)~商品ラインナップはどう増やしたらよいのか?~

          時間と空間のマーケティング分析(2)~大切なのは「いつもの」場所なのか、「今」の場所なのか?~

          スマートフォンの普及で、位置情報の活用がマーケティングでも進んできました。マーケティング担当者としては夢は広がりますが、安易に手を出すと失敗にもつながります。今回は位置情報の基礎知識についてお話します。 場所を示すデータにはどのようなものがあるのか?商圏分析などを行う場合、消費者の位置を把握しなければなりません。ただ、位置情報と言ってもいろいろなタイプのものがあり、一長一短があります。現在分析で用いられるデータのほとんどは、スマートフォンに由来するものです。携帯電話の基地局

          時間と空間のマーケティング分析(2)~大切なのは「いつもの」場所なのか、「今」の場所なのか?~

          時間と空間のマーケティング分析(1)~時間の裏には暗黙の意味が隠れている~

          マーケティングでは、時間と空間はとても重要です。お客さんに、どこでどのタイミングでアプローチするか、時間と空間の把握はその基礎となります。しかしながら、いざ時間と空間に関するデータを収集し分析しようと思うと、いろいろな壁にぶつかります。それは、同じ時間や空間であっても、状況によって「意味」が異なることに起因します。その意味を理解し、それを反映させることがマーケティング分析では必須となってきます。 今回は、時間について、データ分析する際に覚えておいてほしいポイントを解説します

          時間と空間のマーケティング分析(1)~時間の裏には暗黙の意味が隠れている~

          今一度確認したい、「リアル店舗」と「EC」との違い

          コロナ禍特需も一段落し、ECの成長も落ち着いてきた感じがします。しかし依然として売り上げはプラス基調。成熟化した日本の経済においては、注目市場であることは間違いありません。 忘れてはいけない、ECは不便だということECはとても便利だと皆さん思っています。しかし、実は不便もいっぱいあるのです。いくらECが伸びたとは言え、日本のEC化率は約10%。9割はリアル店舗で商品を購入します。その方が便利だからです。 そもそも日ごろ買い物をするお店は、大体が日常の生活動線上に位置してい

          今一度確認したい、「リアル店舗」と「EC」との違い

          広告は、効いているのか?まず、激変する広告環境を理解する~広告メディア再考(2)

          「広告は効いているのか?」とは、ずいぶん大きなテーマを掲げてしまいました。しかし、広告に携わる人間としては避けて通れないテーマでもあります。逃げ回るのではなく、少しずつでもいいから、ぐちゃぐちゃな課題を解きほぐす努力をする方が建設的かと思い、筆を執りました(いや、PCに向かいました)。 既存の理論が通用しなくなった現代の広告環境誰もが実感していると思いますが、広告には一定の効果があります。知らないブランドとの出会いのきっかけになったり、バーゲンセールの日時を知ったりします。

          広告は、効いているのか?まず、激変する広告環境を理解する~広告メディア再考(2)