妖剣士 2話

〇喫茶ファルコ・内(夜)
   八手が料理を作っている。
   朝倉千鶴(26)が座ってコーヒーを飲みながらゆっくりしている。長髪をふぁさッとかき揚げ、眼鏡をくいっとあげる。
八手「千鶴、今日は何で来たんだ?」
千鶴「そろそろあのバカがやらかす頃だと思
いまして」
八手「ああ、なるほど」
   ガチャッと扉が開く。
千鶴「やっと来たか」
   ボロボロの岡川とマイクが入ってくる。
岡川・マイク「(満面の笑みで)ただいま~!」
八手「今回も随分派手にやって」
岡川「まっ、たまにはね」
千鶴「早く横になれ」
岡川「千鶴ちゃ~ん!俺の事考えてやってきたの?」
マイク「誰だ?」
千鶴「技術・治癒課の朝倉千鶴だ、宜しく」
マイク「あ~なるほど。サポーターのマイク・スエンです」
岡川「あれ?2人とも初対面?」
マイク「まぁ元々サポーターにはあんまり縁のない存在だしな」
岡川「そういや千鶴ちゃんどうしたの?買い物の誘い?ごめんね、今日はちょっと疲れがピークで」
千鶴「黙れ」
岡川「はい?」
千鶴「(人差し指を上げて)まず一つ!私の方が年上だ。ちゃんなんて馴れ馴れしく使うな」
岡川「あう!」
千鶴「(指で2を表し)二つ!私は君みたいなチャランポランな人間をそういう目では見ない。堅実で誠実な男こそ正義だ」
岡川「ぐふ!」
千鶴「つぎに」
マイク「待て待て!これ以上言うと大我が死ぬ!俺が言えたもんじゃないが素直すぎる!正論はナイフを超えた凶器だ!」
千鶴「現実を教える、それも年長者にとってやることの一つだ」
マイク「治癒課の人間が人殺してどうする!」
千鶴「そんな事で死ぬような軟弱な人間、妖剣士に必要ない」
マイク「こいつはなぁ!電車で自分の横しか空いてないのにその真正面に女の子がいるにも関わらず女の子が座らなかっただけで2日は寝込むんだぞ!」
千鶴「ふん、他にもこいつは」
岡川「やめてくれぇ!お前らの会話で俺死んじゃうから!」
   ×××
岡川「千鶴さん、もう帰るの?」
千鶴「やる事は終わったしな」
千鶴「と言いたいところだが」
   注射器を取り出す千鶴。
千鶴「お前また無茶したろ?」
岡川「無茶だなんてそんな……」
マイク「かなり無茶したな」
岡川「マイクお前!俺の事売る気か?」
千鶴「そこを動くなよ」
   這いつくばりながら逃げようとする岡川。
八手「マイク、押さえててやれ」
   岡川を押さえるマイク。
岡川「やめろー!離せー!死にたくなー
い!死ぬときはお姉ちゃんがいっぱいいる
ところって決めてるんだぁ!」
   千鶴、岡川に注射を射す。
岡川「死んだ……」
八手「生きてるから安心しろ」
千鶴「ついでだ、整体してやる」
岡川「い、嫌だ~!」
 
〇同・外観(夜)
千鶴の声「お、結構凝ってんな」
岡川の声「右手はそんなところまで曲がらない!あ、あー!」
 
〇同・店内(夜)
   倒れて昇天している岡川、一仕事終えたようにしている千鶴、唖然としているマイク。料理を作っている八手。
岡川「もうお嫁にいけない……」
千鶴「あとは大人しくしてゆっくり寝る事
だ」
マイク「すごいな、これが治癒の本気の力」
千鶴「仕事終わりと。おやっさんも何か伝え
忘れてる事とかありませんか?」
八手「いや、大丈夫、かな。増員の件、頼むな」
岡川「増員?」
八手「今週だけで2体現れている。今月だと5体、はっきりいって異常だ」
岡川「だからといって応援呼ぶこと無いでしょう?俺一人で大丈夫!」
千鶴「お前はムラがあるからなぁ」
岡川「気合と根性でカバー!」
   ため息をつく千鶴。
千鶴「帰る」
岡川「千鶴さん」
千鶴「なんだ、つまらん事だったら」
岡川「俺の剣の事なんだけど」
千鶴「ああ、やはり厳しいな。火属性や水属性ならばその余地はあるが。お前の剣の属性は光だ」
八手「マイナーだもんな」
岡川「何とか改良できませんかね?」
千鶴「難しいが、掛け合ってみる、では」
   出ていく千鶴。
   ×××
   半裸の岡川とマイクが向かい合うように座っている。
マイク「それにしても初めて会ったな、技術・治癒部門の方。魅力的だ」
岡川「お前には渡さねえからな!」
マイク「何の話だよ」
岡川「千鶴さんだよ!」
マイク「お前相手にもされてないじゃないか」
岡川「ぐはっ!」
   血を吐いて倒れる岡川。
八手「はい、お待ちどう」
   八手、ナポリタンを机に置く。
岡川「ナポリタン!いただきます!」
   立ち上がり、ナポリタンを食べる岡川。
岡川「こう鼻から本場ナポリの風が吹き抜けていく感じがするなぁ~」
マイク「大我、ナポリタンは日本の料理だ、イタリアの物ではない」
岡川「じゃあ俺の鼻を吹き抜けていったのはなんだよ」
マイク「何それ、知らん、怖」
 
〇響子宅・外観 (夜)
 
〇同・玄関 (夜)
   響子の叔母が出迎える。
響子「ただいま」
響子叔母「ちょっと遅かったじゃない。どうしたの」
   アヤカシの事を思い出す響子。
響子「ちょっとね」
響子叔母「とにかく早くお風呂入って」
響子「う、うん」
響子叔母「何か心配事?」
響子「うん、でも大丈夫」
   響子叔母、響子の頭をくしゃくしゃする。
響子叔母「大人を頼るのも子供の仕事なんだ
からね」
響子「う、うん」
   にっこり微笑む響子と響子叔母。
響子叔母「それじゃ自慢の娘よ、お風呂へお行きなさい」
   スマホに通知が入る。「謎の爆発?」と見出しに穴が開いた大地が映っている。
響子N「これももしかして」
 
〇喫茶ファルコ・内(夜)
   平らげてあるナポリタンの皿。岡川とマイクがスマホを触っている。
岡川「そういえばお助けは誰に頼んだんで
す?折角なら美人な子がいいな」
八手「そりゃあいつになるだろ。一夫多妻の」
岡川「え~!あいつ?」
マイク「君は苦手だったね」
岡川「全然苦手じゃねえし!」
マイク「モテない僻みかい?」
岡川「次言ってみろ、ボコボコにしてやるからな!」
 
〇響子宅・浴場 (夜)
   お風呂に入っている響子。考え事をしている。
響子M「あの化け物、アヤカシ、だっけ……あんなの忘れられるわけないよ」
   響子立ち上がる。
響子M「おじさんやあの人達はずっと戦ってるんだろうか?あの化け物たちと……」
   体を洗い始める響子。
響子M「私には何ができるのだろうか?」
   お風呂に浸かる響子。
響子M「もしかしたら今も……」
   鼻までつかりブクブク泡を立てる響子。
 
〇長野県・高速道路(夜)
   タイトル「長野県」
   紺野晴人(22)が晴人と同じくらいのサイズのトカゲのアヤカシと戦っている。
   トカゲのアヤカシが先に動き出す。
   右腕で殴ろうとするが晴人に回避されるトカゲのアヤカシ。
   高速道路はがらんどうである。
晴人「間合いが甘い!」
   アヤカシを殴る晴人。
   トカゲのアヤカシ、もう一度仕掛ける。
晴人「そこは俺の距離なんだよ!」
   トカゲのアヤカシを殴り飛ばす晴人。
   怒ったトカゲのアヤカシは口から火を吐く。
   回避する晴人。
晴人「勝てないと思い、自分の得意な距離
で戦い始める、生物としては優秀だ」
   茶髪の財前雪美(23)が晴人に近寄る。
雪美「晴人様」
晴人「終わったか?」
雪美「ええ」
晴人「ならば」
   トカゲのアヤカシが雪美に火を放つ。
晴人「危ない!」
   雪美をどかし、火に包まれる晴人。
雪美「晴人様!」
   晴人が剣を出現させる。
晴人「貴様に残念なお知らせだ」
   剣がトカゲの炎を吸い込んでいく。
晴人「どうやらその距離も俺の方が得意らし
い」
   火を吸い込んだ剣は大きな火の柱を剣先から出現させる。
晴人「はぁ!」
   剣を振るう晴人。
   火の剣先がトカゲのアヤカシにダメージに与える。
晴人「そう簡単にはなぁ!」
   赤髪の小日向瑞樹(20)が晴人に近寄る。
晴人「どうした?」
瑞樹「東京の方から」
晴人「東京本部の人員補充の指示だな。すぐ
折り返すと伝えておいてくれ」
   離れていく瑞樹。
   晴人、トカゲのアヤカシの足を切り裂アヤカシ。
   下の河川敷に逃げるトカゲのアヤカシ。
 
〇河川敷(夜)
   トカゲのアヤカシが降りてくる。晴人が追ってくる。
晴人「はっはっは!もっと醜い声で鳴いて見
せろよ!」
   必死に逃げようとするトカゲのアヤカシ。
晴人「遅いんだよぉ!」
   高笑いする晴人。
   トカゲのアヤカシをいたぶる晴人。
   そこに村人が通りがかる。
   光景を見て腰を抜かす村人。
村人「な、なんだ!」
晴人「ちっ!こんな時に!」
   トカゲのアヤカシが村人を人質にする。
晴人「この俺を相手にそういう小細工が生意気で気に食わないんだよ!」
   剣の火でトカゲのアヤカシだけを攻撃する晴人。トカゲのアヤカシと村人が離れる。
   村人を回収する雪美と瑞樹。
   瞳は開いているものの中々動かないトカゲのアヤカシ。
晴人「つまらんおもちゃだ」
   晴人、剣を大きくかかげ、トカゲのアヤカシにとどめをさす。
晴人「クリムゾンフィニッシュ!」
   攻撃を受け、爆発するトカゲのアヤカシ。
晴人「こんなものか」
   剣をしまう晴人。
村人「君らはなんなのだ!さっきの奴は!」
   無視する晴人と雪美と瑞樹。
村人「何故答えない!」
晴人「貴様に応える義理がないからだ」
   万華鏡を取り出して村人に装着させる瑞樹。
   ×××
   万華鏡を外す村人。
   村人、晴人達を見て
村人「旅のお方ですかい?今日は冷えま
す。お気をつけ下さい」
晴人「(お辞儀して)ありがとうございます」
   去っていく村人。
晴人、携帯を取り出す。
   妖剣士東京本部へと電話する晴人。
   電話している晴人。
晴人「はい、はい、分かりました」
   電話を切り、携帯をポケットにしまう晴人。
   瑞樹と雪美が晴人に近寄る。
晴人「東京へ向かうぞ。まためんどくさい事
になりそうだ」
第二話終了。

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