タチウオを沼津で

タチウオ(太刀魚)はその名が示すように刀のように細長く、全身が銀色にかがやく魚である。暖海性の魚なので南日本に多く、水深一百メートルぐらいのところにすんでいる。かなり産額の多い魚で、年産額は二万四千トンに達する。タチウオの体が銀色にかがやいているのは鱗にグアニンとよぶものが沈着しているためなのだが、このことはタチウオばかりとはかぎらず腹がわの白い魚はたいてい同じである。ただタチウオの場合はグアニンのつき方が著しいためにとくに銀白色にかがやく訳である。このタチナウオのグアニンを集めてセルロイドを溶かした液に混ぜあわせ、ガラス玉に塗ったものが例の人造真珠である。タチウオの口は大きく裂け、歯はするどく、尾の端は細長くとがり、なんとなく薄気味の悪い魚だが、肉はそれほどますくはなく、照焼とか煮付に向いており、またムニエルのようなものにしても結構食べられる。タチウオは八〜九月ごろ卵をうむが、産卵期になっても味が落ちず、味は一年中ほとんど変らないとされている。(「魚のシュン暦」金田尚志著)

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