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【読書感想文】モチベーションの源泉は、新しいことを学ぶことにワクワク、心をときめかせていた体験にあり『モチベーション3.0』

やる気を起こさせる最良の方法は金銭をはじめとする報酬であると、思うかもしれません。しかし、作者のダニエルピンク氏によると、それは大きな間違いであり、圧倒的で満足感の高い仕事をする秘訣は、例えば新しいことを学んだり、創造的な作業をしたり、自分自身や世界にとってより良いことを行ったり、といった活動にあると主張します。

さて、本書が提言するモチベーション3.0を一言でいうと、「内発的動機付け」です。内発的動機付けに関しは、マズローの欲求誤断解説や、ハーズバーグの2要因理論をご存知の方も多いと思うので詳細は割愛します。動機づけの例として例えば、一般的に行われている、お金を払って何かをさせたりする場合、この内発的なモチベーションを失ってしまう可能性があるということです。例えば、子供にお金を払って宿題や家事をさせる、あるいは、やらないからといって罰を与えると言ったことです。本書は、このような40年にわたるモチベーションの科学的研究を元に、真のモチベーションの源泉である3つの要素、すなわち、自律性、マスタリー、目的を検証し、これらを行動に移すためのテクニックを提供するという内容となっています。

では、モチベーション3.0は実際にどのように顕現するのでしょう?本書では具体的に、「オンライン百科事典の開発」を例に挙げています。1995年、マイクロソフトはエンカルタというデジタルの百科事典を開発するため辞書の専門家や言語学者に大金を支払って協力を仰ぎ、CD-ROMのソフトウェア製品として有料販売を行いました。しかしその約10年後、とある競合が現れます。マイクロソフトはこの競合に対して敗北を認めざる負えない事態に直面することになりました。いったいどんな凄い競合なのでしょう?その競合とは、私たちの多くが一度は利用したこともあるウィキペディアWikipediaです。ご存知の通り、wikipediaの利用には対価は必要ありません。それだけでなく、Wikipediaの開発は、世界中の非常に多くの人の無償の協力によって支えられているのです。つまり、マイクロソフトはこの無料で提供されている百科事典に打ち負かされたということです。ウィキペディアように、金銭に拠らずとも人々の生活や生産性の向上に素晴らしい貢献をなしたという事例は枚挙にいとまがありません。

また、モチベーション3.0の考え方は、企業のマネジメントとも無縁ではないのだそうです。前時代の企業活動において、マネージャーは部下・メンバーが自発的に仕事に取り組むことはありえないという前提で人のマネジメントを行っていました。しかしモチベーション3.0にある自律性、マスタリー、目的は、金銭などの報酬に拠らずとも、働く人の高いアウトプットを可能にするという点で理にかなっています。何を同期として働くべきなのか?という選択肢を人が与えられれば、働く人は皆、創造的で柔軟性なやり方を模索し、長期的な目標を見据えて、仲間とも今まで以上に協力して動くことができるのだと作者は主張します。

その根拠として、筆者は私たちの幼少期の体験を例に挙げていて、私自身もこの部分を読んで、確かにワクワクしながら新しいことを学んだりすることに心をときめかせていたことを思い出してその通りだと納得するものがありました。本書はさらに、モチベーション3.0を浸透させるためのアプローチについても言及しています。例えば学校の授業であれば、教えていることが世界とどのように結びつき、生徒の将来にどのように活用できるのか?といったように、生徒に選択肢を与え、活用するためのツールを提供し、教師はメンターとしての役割を果たしていくことが重要である、といったことが提唱されていました。

この本は主にビジネスに携わる人を対象としています。そのほかに、たとえば私は仕事で企業の社員教育に携わっているのですが、教育のコミュニティに関係する人にも大いに参考になる内容でした。

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