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テラリウム|#シロクマ文芸部 #六〇〇

金魚鉢のなかに土や苔とミニチュアを入れてジオラマを作ったやつ……テラリウムだ。未就学児だった娘がテラリウムを気に入っていた。巣鴨をぶらぶらしていたら、市民作品展のなかにテラリウムがあって、「ちょっと見ていっていい?」と娘。「かわいい」「牛がいる」と楽しんでいた。確かに、ガラスの中に小さな世界がある光景は、ぐっとくるものがある。

私も、昔、ビン詰めの妖精のイメージにあこがれて、いくつか絵を描いたことがある。個人サイトの名前も「空中庭園」とつけて、常春の国という設定だった。「スモールプラネット: 本城直季写真集」というミニチュアに見える写真集を一目惚れで買ったこともある。それから、関係ないようだけれど、忍者や侍の出てこないファンタジーと、西洋の影響がない時代劇にもあこがれがあった。(子供のころの時代劇は、いま考えると不思議なくらい西洋の描写がなかった)

今考えると、全部自分で把握できるもの、不純物がない世界へのあこがれだったのかもしれない。実際の歴史は複雑だけど、江戸時代を観るつもりなのに、「これが南蛮の~」みたいな描写になると楽しめなかったんだと思う。だから、物語もビン詰めにして欲しかった。

知らないことが多いほど、自分でわかる小さな世界が必要な気がする。娘ももしかすると、小ささゆえにわからないことがたくさんあって、(ちょっと大げさだけど)その世界からひととき救われたかったのかもしれない。

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