第49話 職人の味に思いをはせ「明星 大砲ラーメン」
「大砲ラーメン」インパクトのある名前だ。
昭和28年の福岡県久留米市。戦後の復興とともに生まれた屋台に、大砲ラーメンの歴史が始まったという。
その歴史を象徴するがごとく守り続けられているのが「呼び戻しスープ」だ。これは開店当初からのスープをつぎ足しながら作るスープだ。これには素人目にも、味見をしながらスープの味を調えていくため、高度な味覚と知識・技術・経験が必要とされるのがわかる。
この反対は「取り切りスープ」と呼ばれるもので、作ったスープは使い切りだ。これは材料を決められた分量、決められた手順で調理すればつくることができる(現実にはそんなに簡単ではないと思うけど)。
効率重視の現代、主流は「取り切りスープ」であろう。しかし「大砲ラーメン」は「時流に逆らうことも必要」と語り「呼び戻しスープ」を守り続けていると聞く。
そのこだわりを聞くだけでもすでに美味しさを感じる。料理は味はもちろんだが、作る人の思いや歴史まで加えて味わうと、無限においしさが広がるものだと思う。
今回はやはりカップめんで『大砲ラーメン』を味わうわけだが、カップめんではリアルな「呼び戻しスープ」は当然味わえないのだが、今日もその歴史に思いをはせながら、気分だけでも味わってみたい。
それではさっそく開封してみる。
小袋は4種『粉末スープ』『液体スープ』、チャーシュー、メンマ、ねぎの『かやく』、そして『後のせかやく』だ。
粉末スープとかやくをいれる。お湯を注ぎ4分待つ。
粉末スープのみでとんこつの良い香りが漂う。白濁したスープでこれだけでもうまそうだ。
それにクリアな茶色の液体スープを注ぐ。スープはオイルの浮いた薄茶色のスープになり、香りもつややかさが加わったようだ。最後に後のせかやくを入れて出来上がりだ。
さっそくスープを一口。存分にコッテリだ。オイルのぬるぬるが唇に染みる。それでいてしつこくない。これだけ飲んでも満足いく味だ。
めんは細麺でほぐれも良く、ツルツルと口当たりも良い。細麺なのにコシも十分だ。めんとスープを交互に、至福の味わいを楽しむ。
今回意外だったのはかやく、まずはメンマだ。シナシナになり、メンマのシャキシャキ感はないものの、スープをよく吸って深い味わいを楽しめる。
そして、入れた時から何かわからなかった『後入れかやく』、茶色いつぶつぶで最初はそぼろかと思ったが、食べてみるとヌルッとした揚げ物の衣みたいな食感に、すこしドライな歯触りを残す濃厚な味と香り、しばらく何か考え、ふとカップのサイドを見ると『カリカリ背油』と。なるほど、これは揚げた背油なのか。
同じカップ麺を食べても、その時の状況により全く味わいが変わってくる。そう考えると同じ味がうまくもなれば、そうでないときもある。こう考えると職人技によって支えられている「呼び戻しスープ」はその時々の微調整を加えられた、その場その時に最高の味に仕上げられているのかもしれない。これはぜひ当地で味わってみたいものである。
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