個人投資家の逆襲第6章コージツ事件

以前、電子書籍で販売していた「個人投資家の逆襲」をnoteで販売しています。私の裁判体験記です。なるべく分かりやすく書いたつもりです。
第6章
コージツ事件
130円  →  139円
公開買付価格・・・130円
裁判所認定価格・・139円
事件の概要・・・公開買付け
私の立場・・・本人訴訟
申立人数・・・・3人
概要 手続き的にかなり問題の多い事件。金額的には不満が残るが、全部取得に関する価格決定手続きで初めて東京地裁民事8部(商事部)で勝ったという点では画期的な事件。「ここなら魚心・水心でやってくれます」と関係者がメールするなど、第三者評価機関のあり方について考えさせられた事件でもある。
 
1.  筆頭株主との確執
 
「ここなら、魚心、水心でやってくれます」
 
  こんなところに、株式の評価を任されたら、大変なことになる。しかし、現実に、こういうことは起きているのだ。
  まず、事件の経緯からお話ししよう。
  稲村聡氏は、平成18年2月、当時の親会社である小杉産業から派遣され、コージツの監査役に就任した。コージツは、子会社の「好日山荘」を通じて、山岳用品の販売などをしていた。
  そして、平成21年1月に小杉産業を退社。同年4月にコージツの社長が逮捕されたため、稲村氏が社長に就任する。
  小杉産業は平成21年2月に破産するが、小杉産業の保有するコージツ株は、同年6月にジャパンファインアーツ社に渡る。ジャパンファインアーツ社は大手製薬会社であるK製薬の創業家一族・A子が実質的オーナーを務める会社である。
  小杉産業破産時の代表取締役であったK氏は、21年7月にジャパンファインアーツ社の執行役員に就任する。そして、ジャパンファインアーツ社は、K氏をコージツの社長とするように要求する。しかし、破産会社の社長を破産手続きも終わらないうちに上場会社の社長にするなどとんでもないことだ。稲村氏らは当然拒否したが、これにより、ジャパンファインアーツ社とコージツとの間に確執が生じた。そして、コージツと稲村氏に対して、考えられない嫌がらせを始めた。
  なんと、筆頭株主のジャパンファインアーツ社は、親会社としての情報開示を拒否。ジャスダックの上場廃止基準に触れるおそれが出てきた。
  ジャスダックは、上場会社の親会社の情報を開示するように求めていた。これは、上場会社であるコージツの義務であり、親会社には特に罰則はない。ジャスダックは、親会社が自らの株式を毀損するような行為に及ぶことを、想定していなかったのだ。
 ジャパンファインアーツとの確執は続く。
 コージツは、経営規模の割に賃料の高い赤坂ツインタワーに本社があった。稲村社長は、賃料の安い神田錦町に本社を移すよう提案した。
ところが、平成22年2月、定時株主総会で、ジャパンファインアーツの反対で、この議案は否決される。このような、嫌がらせとも取れる筆頭株主の行動により、コージツの株価は低迷する。
一方、傾きかけていた業績は、稲村社長らの奮闘や、山ガールブームなどもあり、好調だった。
 

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