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4. なぜ地質物品(岩石等)は売買してはいけないのか?

ジオパークでは、地質遺産の保護を目的としているため、化石・鉱物・磨かれた装飾用の岩石などの地質学的なものがいかなる産地のものであろうとも、その売買にオパークの管理運営団体が直接関わってはならないらしい。さらに、その国の法律で販売が認められていても、ジオパーク内、特にジオサイトの近傍では、岩石・鉱物・化石などの地質学的な物質の持続可能でない取引全般を積極的に防ぐべきであると言われています。この表現は、ほぼ売ってはいけないに等しい表現に思われます。

直前のコラムで説明しましたように、今地質遺産ではなくとも、研究が進めば、ほとんどの地層や岩石、あるいは鉱物や化石は、貴重な地球の記憶を含むことが明らかになる可能性があり、地質遺産となりうるポテンシャルがあります。ですから、地質遺産の保護を標榜するジオパークとしては、限りなく多くの地質物品の販売を阻止したいのです。Guy Martini氏の動画で示された、「地質遺産の保護と地質物品の販売禁止は密接に関係している」や「地球の記憶であるジオサイトを保護しなければならないと考える一方、地質物品を販売する博物館や店舗を推進することは矛盾している」といった表現は、そのようなジオパークの体制側の意向を強く反映しているのです。『もう、とにかく地質物品は売って欲しくないのよ〜♪』そう言う心の声が聞こえてくるようです。

しかし、売ってはいけない地質物品の範囲を限りなく広く捉えると、私たちの日常生活は成り立たなくなります。今や大人から子どもまで、スマホなしでは過ごせなくなっています。スマホには、金・銀・プラチナ・バナジウム・銅などが使われているのです。それらは当然、地質物品のお仲間です。車を走るガソリンは石油が原料ですし、洋服に使われるナイロン・アクリル・ポリエステルなども石油から作られます。建物に使われるコンクリートは、採石場で採取される石灰岩や砂利などで作られています。したがって、ジオパークでは、国の法律に従って採掘している地層や岩石の販売は当然認めざるを得ません。ジオパークのキーワードは、「持続可能」ですが、石油や鉱物資源の埋蔵には限りがあり、採掘すればいつか無くなり、「持続可能」とは言えません。岩石販売できるかどうかは、「持続可能」が鍵であるという議論もありますが、こうした状況を考えると、「持続可能」が確かな免罪符となるとは思えません。

私たちの生活は、地質物品を活用して、成り立っています。本当に持続可能なのでしょうか?