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10. みんなで幸せになりたいじゃん ― ジオパークにおける岩石販売についての議論 その2

ジオパークで問題になる岩石販売の問題について、これまで色々と考えてきました。この問題で、とても難しいのが、岩石販売をしている商店主に理解を求める方法です。商店主さん側からしたら、「買ってくださる方がいるから、普通に仕入れて、普通に販売している。それが何故いけないんだ。ジオパークは、商売の邪魔をするつもりか?」そう言われると、ジオパークを推進する側はたじろいでしまいます。前回のnoteで、ChatGPTを使った岩石販売問題解決案では、教育と意識啓発が第1番に挙げられていました。しかし、ジオパークの理念を直接お話しても、なかなか理解を得られるものではありません。貴重な地質遺産を守りましょう。人類の未来のために残しましょう。そんな話を、日々の生活のため、一生懸命働いて、日々の売り上げ状況に悩んでいる商店主の方に理解されるはずもありません。では、どうすれば良いのでしょう?

 もちろん、私にも名案がある訳ではありません。ただ、難しい言葉を並べるより、わかりやすい簡単な言葉の方が、良いのではないかと考えています。そこで思いついたのが、「みんなで幸せになりたいじゃん」という合い言葉です。「商売で儲かる」それは、個人の幸せです。そして、次に、家計が潤えば、家族の生活が良くなり、一家の幸せになります。商店街が活性化されれば、地域全体の活性化につながり、地域の人々が幸せになります。一方、岩石や化石、鉱物を買った人も、新しいコレクションが増えて、個人として幸せになります。ジオパークが問いかけているのは、それだけで良いのですか?ということです。貴重な地質遺産を守れば、より多くの人々がその岩石や化石、鉱物を見ることができます。また、それらの地質遺産を存在して居た場所からもぎ取らなければ、つまり地球と切り離さなければ、地球の物語の一部を語る人類の遺産となるはずでした。将来のより多くの人々の幸せを奪うことになるのです。また、海外の岩石や化石、鉱物は、貧しい労働者の生活の糧にもなっていますが、一方で児童労働など、本人の望みとは関係なく、辛い労働に従事させられる子ども達の幸せな日常を奪っている可能性があります。また、岩石や鉱物採取の際に薬品などを用いて、周辺住民の生活水への汚染が発生している場合もあります。海外、主に途上国で採取される地質遺産は、一部の業者に利益をもたらしますが、周辺の多くの住民に様々な被害をもたらし、幸せな日常を奪っている場合があります。

ジオパークが求めているのは、「幸せになろうとする人」の邪魔をすることではありません。一部の幸せになる人(商店主や採掘業者や仲買人)のために、不幸になる人々をなくしましょうというのが、ジオパークが求めているポイントです。途上国で苦しむ人々、将来地質遺産を利用する可能性のある子ども達、そのような人々の幸せも考えて、商売をしてください。「みんなで幸せになりたいじゃん」そう伝えたいのです。ただ「岩石を売るな」と訴えるのではなく、どんなところでどのように採取された岩石・化石・鉱物なのか?それらの地質遺産の採取が誰かを不幸にしてないかを確認しながら、商売をして欲しいと岩石販売の商店主に伝えていきたいものです。商店主にそのように訴えると同時に、ジオパーク側も、その商店主が岩石を売っていることで地域において辛い立場にならないように配慮する必要がありますし、売り上げが減って悲しい思いをしないように、代替商品の開発や販売促進をお手伝いする必要があります。「みんなで幸せになりたいじゃん」は、商店主だけではなく、ジオパーク推進側への自戒の言葉でもあるのです。