うそんこ地学事典 6. 火砕流と溶岩流

かさいりゅう:当時東大理学部の学生だった葛西 龍くんが、大好きなサーティーワンに行き、コーンのダブルに、もう一つ重ねて、トリプルにして、原宿の通りを歩いていた。1番上のアイスはとても粘性の高いデイサイト・アイスだったので、そうは溶けるまいと彼は安心していた。しかし、1番上にこってりと盛られたデイサイト・アイスは、次第に形が崩れ、粉々に砕けて、コーンから地面へ流れくだっていった。粉々に砕けたデイサイト・アイスは、地面に落ちて、近くを通りかかった蟻たちの頭の上に降り注いだ。「危ない!」そう感じた蟻たちは、慌ててよけたので、なんとか無事だった。何が降って来たんだろうと蟻たちは降り注いできた破片を取り囲んだ。好奇心の強い一匹の蟻が、その破片をなめて甘いことに気がついた。今日は何も餌がとれなかったから、家で待っている母ちゃんに叱られそうだと心配していた蟻たちは、我先にデイサイト・アイスの破片に飛びつき、それぞれが大事そうに抱えて巣に戻っていった。それ以来、この蟻たちは「葛西 龍は危険だけど、恵みももたらす」と感謝し崇めていたが、本人はそのことを知らない。一方、葛西 龍は、東大理学部火山教室を卒業して、火砕流の発見・命名者となったが、蟻たちはそのことを知らない。

ようがんりゅう:室町時代から続く老舗和菓子店では、店の裏にある工場で、主に羊羹を作っている。羊羹は、砂糖を溶かした甘い溶液を金属の細長いトレイに流して、徐々に冷やして、最後に四角い型に流し込んで冷やして作られる。この菓子工場では、このトレイを流れる羊羹の原料の流れを、羊羹流と呼んでいる。羊羹に含まれるケイ酸の量が低いとさらさらと流れるが、ケイ酸の量が多いとモコモコとして、流れが悪い。モコモコすると綺麗な羊羹が出来ないので、計算違いで量を間違えたことを後悔するはめになる。ケイ酸の量が53.5w%以下の羊羹を玄武岩質羊羹と呼び、70w%以上のものを流紋岩質羊羹と呼んでいる。羊羹流のトレイの途中で分岐があり、一部は水中で急冷させる。すると形が枕状になり、枕状羊羹として販売されている。枕状羊羹はたいてい玄武岩質である。この店の羊羹は、とても人気がある商品である。トレイで羊羹流を流して作る製法のため、この店では当初トレイの羊羹と名付けていたが、昭和に入ってから、なまって「虎屋の羊羹」の名で流通するようになった。この虎屋の息子が、家業がイヤで、地学を一生懸命勉強して有名な火山学者になった。彼は、ハワイのキラウエアから流れるマグマが地表で流れる様子をみて、「これは、我が実家の和菓子店で、トレイを流れる羊羹流みたい」だと言ったのだが、近くにいた学生たちは聞き間違って「溶岩流」と覚えてしまって、今に至っている。科学は甘くない。。。