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かけだしのコインランドラー

東京都内の安い賃貸って、洗濯機を室内に置けないじゃないですか。
たぶん、同じ値段の家に住んでいても、都内じゃなかったらきっと洗濯機って室内に置けると思うんですけど。
私は都内の安〜い賃貸に住んでいるので置き場がなく、週に1〜2回、コインランドリーに通っています。
今日もね、行ってきた。一週間分の洋服をカゴに入れて。
流石に一週間溜め込むとけっこう物量があって、大変だしめんどい。

1回300円。
ボタンは一つ。手洗いとかオシャレ着コースとかそんな概念は存在しない。
色物を分けようとか思うと、もう300円かかる。もったいないから、かろうじて洗濯ネットを分けて、ああ、色が移りませんように、レースが引っ掛かりませんように、と祈りながら半ば諦めつつボタンを押す。
35分とか40分とか、そのくらいかかる洗濯時間はとりあえず一旦家に戻って、掃除をしていたり、カーテンレールに干しっぱなしのままの服をしまったり。
かけだしのコインランドラーだった頃はわざわざスマホでタイマーをかけていたけど、今は違う。通い詰めて一年のいっぱしのコインランドラーなので、勘で向かう。ちょっとくらい放置しても平気なのを知ったからこその余裕。
ウィンって自動ドアが開いて、むわっと乾燥機の匂いがして、ガコガコ動いている洗濯機が片隅にあって、、、まだ洗濯終わってなかった、、、あと4分あった。あ〜。今日もまた。打率悪いコインランドラー。

いつも閉店ギリギリを狙って洗濯しに行くから、終わる頃には電気が半分消えている。
今日も半分の明るさの中、乾燥機から洗濯物を回収していたら、ウィンって音がして、若い男の人が入ってきた。
え。ちょっと身構えてしまう。他に取り残されている洗濯物はない。この時間に雑部屋着のまま誰かに会うのも嫌だし、洗濯物を畳んでいるというこの公共で繰り広げるプライベートタイムに誰かに遭遇するのも嫌。でもそれより、この暗がりのコインランドリーは閉店時間まで秒読みなんですけど、一体何用で……。

……あ、なるほど、そのカゴの中は洗濯物ですね。
乾燥機の前に立ち、
ドアを開けようとして……開かない。
中を覗いて、
もっかいドアを開けようと…………開かない。
ははぁん、さては新参者ですね。
片目で様子をチラチラ見つつ、いや〜、教えてあげるべきか否か迷いながら洗濯物を畳み続けていると、
「これって、お金先ですか」
と聞かれた。私は待ってましたと言わんばかりの気持ちで、
「もっと強く引っ張るんですよ」
と、軽々とお手本をみせる。
「!!」と驚きながらドアを開ける新参者さん。
丁寧にカゴの中の物を入れて、お金を入れて、ぐるぐる回り出す様子をじっと見つめ始めた。
なんだか懐かしいな。
私も1年前は乾燥機のドアがこんなにかたいなんて知らなかったし、洗濯槽シャワーボタンも押し逃していたな。洗濯物を回している間はそばで見守っていたっけ。手持ちの服はほとんど乾燥機NGだったからそもそも乾燥機をほとんど使っていなかったけど、今ではもうほとんど放り込んじゃうし。
閉店時間を過ぎると再入店はできないって書いてあるのに、実際はしばらくは入店できるってことも知った。
家からちょっと離れたところのコインランドリーは靴も洗えるし、駅の方へ向かう途中にある店舗は領収書が発行できる。
いやぁ、随分詳しくなったもんだな。

新参者さん、強くなれよ……。

そう思いながら、
5分後には全消灯することを言わずに、
コインランドリーを後にした。



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