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博物館資料保存論 レポート(設問形式)⑫

【問】材料調査法のうち、「非破壊調査法」について簡潔に紹介せよ。

私の書いた回答はこちらです↓↓

資料を破壊せずに資料の材質や状態を調査する方法が非破壊調査法である。
 持体が紙か布またはその他の材料化を調べるためには光学顕微鏡でまず観察を行う。表面の観察で得られた特徴より材料を同定していく。ただし、非破壊検査調査には限界があり、さらに詳しく調査するためには、繊維一本程度を対象資料より採取し繊維が持つ形態や染色性などの特徴から材質を明らかにしていく必要があるが、これは非破壊調査ではなく破壊調査となるので所蔵者との相談が必要である。
 彩色材料の調査の場合の調査は顔料か染料かで分析方法が異なり、予想が難しい場合も多いが顔料・染料と両方の場合を想定した調査を行う。調査の方法としてはまず、蛍光X線分析計(XRF)を用い、元素を同定する。しかしながらこの手法で分析できるのは元素のみであり、Fe(鉄)が検出されとしたらそれが単体の鉄であるか、化合物(弁柄などの酸化鉄)であるか硫化鉄などの化合物であるかは区別が不能である。さらに検出結果はあくまでも推定であるため、最終的には異なった分析法の結果を複数組み合わせて材料を同定していく必要がある。その際に重要となるのが材料分析に関するデータベースである。
 色に関する調査法の基本は光の波長ごとの反射率であり、その際は分光光度計を利用しその結果から明度や彩度を数値化して色差を求める。この結果と既知の彩色材料の結果を比較する。また、分光反射率の結果のみでは材料の同定はできない。
 染料の分析に有効とされるのは三次元傾向分光分析法である。微小部分や大型資料の分析が可能であり、測定用のプローブを使用しての調査を行う。測定結果では、横軸に蛍光波長、縦軸に励起波長光波長をとり、蛍光強度を等高線で表すことから三次元蛍光分光分析と呼ばれている。また、この方法のみでの材料の同定をすることはできない。
 赤外線分光分析法では物質の持つ結合の振動モードに生じる吸収を測定する。博物館資料では全反射を利用することが有効であり表面の薄い層の解析が行える。

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