Blu-ray発売を迎え、今さらリズと青い鳥を振り返る

リズと青い鳥Blu-ray、ついに発売ですね。

Layerd01 でご一緒したB.Toriyamaさんが、リズと青い鳥に言及した私のセットリストの一文をTwitterに載せたところ、そこそこの反響があったとのことでした。

よくよく考えると、12回も劇場に足を運んで、その度に思考をぐちゃぐちゃにされ色々考えたりしていた割にはちゃんとそれを文章にしていなかったなぁ…と思い出し、Blu-ray発売を迎える今さらながらメモしておこうと思った次第です。

自分にとっては、元々(超弱小ながら)小・中・高と吹奏楽部ないしは金管バンドの部長を務めた端くれとして、「響けユーフォニアム」シリーズはそれなりな想いでアニメを見ていましたが、そこにさらに追い打ちをかけてきたのが映画「リズと青い鳥」でした。そのような方はとても多いのではと思います。
初見の先行上映(もう8ヶ月前…!)に始まり、その後自分はなんでこんなにヤラれているんだろう…?と自問自答しながら何度も何度も劇場に足を運びました。私は「みどりちゃんはもち蔵のことが好き」と思っていた程度に読解力の欠落した人間なので尚更なのですが、何回観てもその度に感想と理解が異なり、ようやく10回目くらいから、ぼんやりこれは何の話なのかということが言葉にできるようになってきました。なので、これから書くことは当たり前だろこのハゲ!メガネ!という事が多いと思いますが、何卒ご容赦ください…。
(また未見の方にはネタバレもありますのでご了承ください)

吹奏楽曲の「リズと青い鳥」

劇中に登場する「リズと青い鳥」という曲は、原曲が全四楽章にも及ぶ大作です。映画の中では、このうちの第三楽章にしか触れられません。
映画冒頭、みぞれが繰る楽譜のページの多さから、初めは原曲全四楽章分が配譜されたのだと思います。あのタイミングで、傘木さんがなぜあんなにも(不自然なくらい)良いよねぇこの曲…としたり顔で言うのか、原曲を聴くまでは分かりませんでした。単純に、1st Fl(フルートパートで一番上手い人が担当するパート)でソロが多い楽譜だからだと気づいたのはサウンドトラックで原曲の第三楽章を聴いたあとでした。

これこそ以前書いた事なのですが、傘木さんは中学時代の部長経験者です。適当に部活している先輩部員に楯突いて一旦退部してしまうほどですし昔から演奏技術にはそれなりな自信があるはず。更に、周りはあのワンピ重要なかよしフルートパート、奪い合いという雰囲気でもない(ほんとのところはわかりませんが)。何となく1stは傘木センパイで決まり!という空気だし、当然ソロは自分のものだ!という自信と決意があったはずです。

しかし、コンクールでの演奏には時間制限があります。制限に収まるように編曲をする必要があるわけで、その裁量は当然顧問の滝先生に委ねられます。滝先生が下した結論はエグいの一言でした。第三楽章では、ソロのほとんどをオーボエに委ね、全てのフルートソロを削っています。カット前は、オーボエには及びませんがそれなりの長さのソロがありました。
コンクール編曲がオーディションの前なのか後なのかはわかりませんが、譜面に「絶対ソロ吹く‼︎」なんて健気に書いてある部分は、配譜時点で期待しまくった第三楽章のながーいソロではなく、第四楽章のたった2小節のソロです。それに比べたらオーボエは…と思うとそれはもう辛い気持ちにしかならないわけです。

先日、幸運にも原曲の全四楽章を通しで生演奏を聴く機会(第3回 北宇治吹奏楽部定期演奏会@宇治市民文化センター)があったのですが、当然ながら全楽章はコンクール編曲とはスケールが全く違いました。そして何だったら第三楽章以外にもコンクール編曲への突っ込みたくなるポイントが。この件は来春の新作映画のネタバレにもなりますので書きませんが、原作小説を読んで先のストーリーを知っていると気になってしょうがない。さらに余談ですがコンサート初日の神奈川では二楽章と三楽章の間に声優の司会を挟んだらしい。全く意味がわからない。全然音楽聴かせる気がないでしょ、そのイベント…。
…と、色々話がそれましたが、何が言いたかったかというと、「リズと青い鳥」の原曲は、聴いたことがある方はお分りの通り、第四楽章で全てが救われる構成になっています。個人的には、サントラを聴いて あぁもうリズは救われるんだから全部OK!大丈夫!と思ってしまったくらい。
映画の中で、部員が各々個人練習している音が聞こえてきますが、みんな第四楽章ばっかり練習している気がします。それこそ見ている側(私)の「救われて欲しい…!」という気持ちの表れなのかもしれないけれど、話中、曲のモチーフになっている絵本や小説にはない「救い」が楽曲中は確実に存在しています。傘木さんは、(当時の本人の思いは別として)たったの2小節だけでもその第四楽章でソロを吹いているはず…という事実は、本当に救いだと思います。

で、結局何の話だったのか

ということで、あんたなんでそんなにハマったのよ、ということなのですが…
<<以下結構なネタバレで視聴後の方向けです>>


映画では、ご存知の通り、傘木さんとのぞみの過去から現在までを含めた関係性を「リズと青い鳥」という曲を通して曝されていくお話です。特に映画は互いにリズか青い鳥かという気づきを吐露するところが一つのヤマ場ですが、各々のカットが交互に入りまじり最後の一言は音声がなく、はっきりと何を言ったかは表わされていません(原作小節では明確に発言しているのに)。

みどりちゃんを誤解する低レベルでアホな私は見事にここで悩みに悩んでしまいました。とにかくはじめのうちは どっちなんだ…鳥は…リズは…??とぐるぐるしていたのですが(追記:ここ多分それほど悩むようなところではなく、Blu-ray特典の音声台本には明確に答えが書いてありました)、青い鳥だから何かいいものをくれるんだろうなぁという小学生的単純発想をして以降、少し腑に落ちました。色々と端折りますが、どっちがどうなのかはどうでもよくて、これは”時間の経過を経て他者から与えられたものを自分で選択し自身の原点とする話”なのだなぁと。

ってまぁ普通に観たらそりゃそうだろ!という話なのですが、自分はなんでこんなにグラグラ気持ちを揺さぶられていたのか?と振り返ると、自分自身も吹奏楽部をそれなりに原点とみなしていて、そこそこ自信がありながらもついていけなくなり挫折し、後々紆余曲折経て自分のものとして消化していった、というようなことを無意識に思い出させられていたのかも…と思いました。私の場合はたまたま同じ吹奏楽だったけれども、そういう経験は他の分野でもあり得るし、大人であれば何かしら思うところがあるのでないかと思います。
高校生が自分自身の原点を獲得していく過程の一部分を、山田監督のおっそろしいまでの演出により まるで目の前で起こっている出来事のような感覚で見せつけられることで、生々しくて辛くて美しい話として心に引っかかり残ったのだなぁと思いました。

前述の吐露シーンでは、みぞれが気づいた表情となる瞬間にテープの再生ボタンが押されます(思い出すだけで泣きそう…)。上を向くみぞれと、うつむく傘木さんが対照的ですが、ベクトルはどうあれ、あの瞬間は完全に再生のスタートであって、まさに原点を選択して掴む瞬間なんだと思います。なんて前向きなお話なんだろう、と。監督が本作に関するインタビューで肯定的なものを作りたい、と仰っていて感銘を受けたのですが、本当にその通りだと感じます。沢山の人に観てもらえたらよい作品だなぁと心から思います。

ここまで書いてちょうど早めにBlu-rayが届いた人たちが鑑賞を終えたツイートが散見されるようになりました。明日には私の手元にもBlu-rayがあるはず…。次観た時はどのような感想になるのか、今から楽しみです。

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