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『BLACK TRAIN』

1.「BLACK TRAIN」
渦巻く世界の闇と人間たちのドス黒い心は、やがて実体化され黒色の汽車となる
ブラックトレインに乗せられ、それでも続いてゆく俺たちの人生
ブラックトレインに乗りながら眺める様々な人々の様々な人生を、各曲(各編)から成るブラックトレインというテーマで綴った短編集のようなロードムービーLP



2.「嘆きのコーヒーサイフォン」
ボンクラ若手スタッフの教育に頭を悩まされイライラする初老男という内容の歌詞
対象も自分も一歩引いて見る長渕の客観性と習性により生まれるユーモア


3.「Loser」
うらぶれた負け犬が絶望の淵から見た僅かな光
EDMと長渕フォークの結合の完璧な調和
新基軸なのに素知らぬ顔で飄々としている長渕
憑き物が落ちたが獰猛さも失っていない長渕
かっこいい



4.「かあちゃんの歌」
短編小説集のようなLPであり、この歌も長渕の母親に特定した歌ではなく、それによりリスナー誰もがより感情移入しやすい
やっぱりかあちゃんは、俺たちみんなのルーツ


5.「マジヤベエ!」
反社の女と関係を持ってしまいマジヤベエ
長渕得意のオッパイにしゃぶりつく描写や、筋を立てればアソコが立たないとか余裕のユーモア
フィクションと短編小説集がコンセプトのLPだから、様々なジャンルの人の人生の様々な局面を描いている


6.「ガーベラ2017」
まさかの前LP収録曲のセルフカバー
(本人インタビューによると、こっちが元々のアレンジらしい)
このLPの短編小説集というコンセプトにぴったりだから再収録したのだろう
本人によるハモリが美しく、まるで長渕が二人いて一緒に歌っているみたい


7.「愛こそすべて」
一見スイートなラブソングかと思いきや、愛おしい人との別離の歌
俺たちを甘やかさないシビアで凄絶なブラックトレインから眺める旅



8.「自分のために」
結局は自分自身なんだよねって歌
「待ち遠しい明日なんて本当はひとつもない」とは、身も蓋もない
いちいち容赦なく鋭く突く
それはストレートということ
EDMとブルースハープが完璧なマッチのグッドアレンジ


9.「誰かがこの僕を」
「平易な言葉を使いながらも、陳腐にはならないギリギリを攻める芸術」という、長渕剛が昔から一貫して挑戦していることが、ここにきてよりシンプルにより深くなっている
普遍的ということ
そしてメロディとの調和により、さらに響く
成熟したステイドリーム



10.「Can you hear me?」
孤児として、両親を知らずに生きてきたある青年
僕が生まれてきて誰が一体喜んだ?と嘆く
そんな彼にも、今夜自分の子供が生まれる
あの日の幼き自分に、僕が子守唄を歌ってあげるよ、聞こえるかい?

さっきの「かあちゃんの歌」は、想う親がいる実は恵まれた境遇の者の歌だったことが伏線にもなっており、この歌の悲しみが際立つ

若い頃から一貫して孤独や命について歌ってきた長渕が、今までとは違うフィクションというアプローチで、リスナーの想像力を喚起させ歌を響かせることに成功している
吟遊詩人長渕のイマジネーションの深さ
進化しつづける長渕剛

そしてブラックトレインに乗った俺たちの旅は続いてゆく


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