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『家族』

1.「三羽ガラス」
事務所スタッフによる横領詐欺事件、ツアーキャンセルと多額の負債、大麻逮捕
色々あった長渕の復帰作
内省と再生のLP
三羽ガラスとは、長渕事務所から数億円の横領をはたらいた元スタッフ三人組のこと
我が身に起きた惨劇をも俯瞰的に見て歌にしてしまう、自分を嘲笑う泰然自若でユーモアを忘れない長渕の作家性


2.「傷まみれの青春」
飄々とした男の平凡な日常を昭和歌謡アレンジに乗せて歌う、肩の力の抜けたポップス
カリスマ自己陶酔のピークだった前作キャプテンから憑き物が落ちたよう


3.「明日」
「気張いやんせ」に似た雰囲気の純日本的な曲
シリアスな内容を明るいトーンで聴かせる


4.「月が吠える」
エレキ弾き語り長渕流ブルース
留置場で鉄格子の小窓の向こうに見た月の心象スケッチ
E→Amと長渕にしてはおしゃれなコード進行も聴ける


5.「一匹の侍」
自分を侍だと鼓舞しなければ、裏切りばかりの世知辛い世の中を生きていけませんよという歌
ちょっと不貞腐れてる長渕


6.「耳かきの唄」
横領詐欺事件で仲間に騙された絶望をきっかけに、自分の来し方を振り返る
「イカサマだらけの大泥棒達もあの頃は確かにマジだった」と詐欺師達を赦す描写がクライマックス


7.「何故」
本人演奏によるピアノ弾き語り
何故?と常に自分を問いただすことから逃げない男


8.「友よ」
長渕十八番、昔の友達が成熟過程で変わってしまって寂しいなフォーマット
倉本聰に熱唱系ではなく囁くように歌う曲を作ってくれと言われて書いたらしい


9.「家族」
弾き語りで綴る、長渕純文学の研ぎ澄まされた完成形
ギターを日本刀のように構え、人生の異類異形と戦う男の姿が目に浮かぶ、いかめしい畏怖堂々ぶり


10.「己」
色々辛い目にあったけど、元を辿れば自分自身(己)がきっかけなんだよなと気がつく


11.「身をすててこそ」
あなたの献身に救われました、今度は俺が身を捨ててもあなたのお役に立ちたいですという歌
生の実感を希求する気持ちを、
「傘を捨てて濡れた土の上を歩いてみようと決めた」とは、さすが吟遊詩人
優しさバラードで凄絶LPの幕を下ろす

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