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鴨居の上

 一月、最初の日曜日、夕暮れ。  従兄弟の輝明が年賀と称して一升瓶をぶら下げてやってきた。輝明がひとりでわたしの住まいに来るなんて、初めてのことだ。  ドアを開け、輝明を見た。迷ったが笑顔はやめて不機嫌な顔で出迎えた。 「めずらしい、しかも連絡なしに来るとは。不在だったらどうするつもりだった?」 「これも運命として帰ったよ」 「わたしの留守が、輝くんの何かの啓示になっちゃうんだ」 「かも……」  わたしは苦笑いで差しだされた一升瓶を受けとり、同居人の千佐都へ渡した。 「これ