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母は産まれも育ちも名古屋市内だけれど、祖父の在所は岐阜県。濃尾平野が終わって、低い山々が連なるあたりにある。 祖父に連れられて、子どもだった母は弟の征男叔父さんと一緒に、正月には年賀へ行って干し柿を貰い、春先には土筆を採りに岐阜へ行っていたという。 初夏にはさくらんぼや桃を貰い、夏は井戸で冷やした西瓜を食べ、胡瓜や冬瓜を貰って帰る。 九月のなれば栗の収穫を手伝い、農協へ持っていくように選別もした。 師走の終わりごろに餅つきに行き、餅を貰ってくる。 そんなふうに年中
朝、遠慮がちな歓声で目が覚めた。 八時七分、日曜日に起きる時間じゃない。午前中は爆睡するつもりで、昨夜というか今朝というか、寝たのが三時すぎなのに。 頭はくらくらするが、目覚めの気分がハイになりすぎていて、二度寝はもうむずかしい。 パジャマだし、髪はボサボサだし…… 目でのぞけるていどに、カーテンに細いすき間をつくって外を見る。けれど古アパートの三階から見えるのは、山脈のように重なる屋根、屋根、屋根。もちろんところどころにそびえる高層、控えめな中層のマンションや