揚げたてフライが旨い上野•肉の大山の前を通ると行列ができていた。８年くらい前だろうか、はじめて伊藤さんに連れて行ってもらったときは並ぶことなくすんなりと買うことができた。店先の小さなカウンターで揚げたてのコロッケを頬張りハイボールをゴクッと飲む伊藤さんを思い出す。 伊藤さんとは歳が五十歳くらい離れているけど、僕を子供扱いすることなく先輩面することもなく対等に話してくれる。缶チューハイ片手に散歩しながら伊藤さんの話を聞くのが好きだった。 浅草橋から浅草まで歩いて神谷バーで一
上野に着いて「さぁ飲むぞ！」という時や「最後にあと一杯！」とまだ飲み足りないって時に行く『立飲み屋たきおか』は朝７時から営業している呑んべえの楽園だ。 「こちらどうぞ」と通されたカウンターに財布の中の小銭を並べる。 見ているだけでわくわくする壁にかけられたホワイトボードには一六〇円〜三〇〇円のつまみが並んでいる。 まずは酎ハイを注文。喉が潤ったところでつまみの里芋煮とガツ刺とイカぬたを注文。並べた小銭から支払い、この小銭が無くなったら店を出ようと一応ルールを決める。 味
上野に行くとだいたい「マーラータンが食べたい」となる。数年前、台湾を旅行したときに夜市の屋台にどっぷりはまってしまった。漢字が読めない何が入っているかわからないメニューもとりあえず食べてみた。雑踏の中で食べる、味わったことのない料理に僕は完全に虜になってしまった（その後中華料理屋で働くほど）。 そんな台湾屋台の雰囲気を少しでも味わえる場所はないのかと日々思っていたら、発見したのが上野アメ横の多国籍料理が立ち並ぶ通りだ。 屋台ではないけれど、アメ横を行き交う沢山の人の目も気にせ
新宿で終電を逃すとコンビニで缶チューハイを買ってしばらく街を徘徊する。酔っ払って終電を逃すくらいだからその時何を考えているのか覚えていないが、ぷらぷら街を歩くのは楽しい。 そうして歩き疲れて始発まであと数時間となると最後の楽しみが花園神社側の「飲食笑商何屋ねこ膳」だ。24時間営業のねこ膳、ゴールデンタイムは混んでいてなかなか入れないが深夜は一人カウンター席へ。 締めはホッピー白セット。つまみは毎回決まってほうれん草のおひたしと鶏皮ポン酢、そして名物のねこ膳グラタンを注文。
町にある珈琲豆の焙煎販売のお店へ行くと、店内の片隅に食器類のリサイクルコーナーがあった。こういうのはついつい覗いてしまう。10円〜の器や湯のみなど魅力的な物ばかり。お客さんが持ってきた品らしい、その人の食器好きが伝わってくる。 箱の中で輝く銀の器が気になった。手に取り見ていると珈琲屋の店主が「私も使おうと思ってカレーを盛ってみたけど、それには少し小さくて使い道が難しくて……」と話してくれた。確かに微妙なサイズだ。 僕は『やきとん屋で内蔵の刺身が盛られてくる器みたいだな』と
国産のうなぎなんて、ここ数年食べていない。 子供の頃は、ばあちゃんちに行くとよくうな重を食べさせてくれた。 近所のうなぎ屋から出前を頼んで、子供にもしっかり一人前食べさせてくれたのだ。今となっては幻の四角く大きな重箱。あの頃は「美味しい！」とわかったように食べていた。憎たらしいガキだ。 ある日、妻の親戚からカタログギフトが送られてき。 「好きなもの頼んでいいよ」と言ってくれたので、ぺらぺらとめくって悩んでいるふりをしていたけど何を頼むかはすでに決まっていた。 数日前スーパー
二十代前半、よく行っていたお店が横浜駅を流れる帷子川沿いにある。 アメリカンな雰囲気の店内、ほとんどのスタッフがサーフィンかスケボーをやっていそうな日に焼けた男たちが出迎えてくれる「グリル&バーSTOVES」は僕にとって入るのに勇気がいるイケている店だった。 名前を覚えてくれた店長が「おう！将志！」と握手とハグで出迎えてくれたが、馴れない僕はそれがこっ恥ずかしかった。 この間、横浜で用事を終えた帰りに久しぶりにSTOVESへ行ってみた。知っているスタッフはもういないし、良
