「木下様家蔵の伽羅などを聞く」会、無事に終了しました。

去る1月26日の「その一」に引き続き、2月9日に「その二」を開催しました。
(メニューにつきましては、前の投稿をご参照下さいます様お願い申し上げます)

今回の香木たちもいずれ劣らぬ上質な、言わば「昭和の名香」と表現しても許されるかな?と思える内容で、皆さまと一緒に大いに愉しませて戴きました。
貴重な香木をご提供下さった木下様には、心から篤く御礼申し上げます。

頂戴したご感想を以下に紹介させていただきます。

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「木下様家蔵の伽羅などを聞く」、2回目も楽しく参加させて頂きました。
種類の異なる伽羅を聞かせて頂き、緑油と黄油の違いがやっと分かってきた気がします。
貴重で素晴らしい香木の数々を聞かせて頂く機会を作って頂き、本当にありがとうございました。

埋もれ木や偽物を聞いてみるという試みも貴重で良い経験になりました。
偽物はそのままの状態だと香料のにおいがプンプンしますが、たいてみるとそれほどのにおいがしないのは意外でした。
内部にはそれほど香料がしみ込んでいないのかもしれませんね。

カタールの王様のオイルやお香も珍しいものでした。
国によって香りの使い方やとらえ方はさまざまだと感じました。
その中で日本だけが香道という芸道を生み出したということを、改めて貴重なことに思い、この文化をこれからも伝えていかなければいけないと考えました。

ありがとうございました。
今後の企画もとても楽しみにしております。

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そう言えば、今回も時間に余裕があると見越して、前回もご参加の男性の方の木下さんから頂戴した偽物二種を、炷き出してみました。

最初の例は、近年のネットオークションで比較的に多く出回っているタイプで、沈香(伽羅を含む)の原木とは無関係の植物に化学合成香料を含侵させた、いわゆる「インジェクション」と称される物です。
皆さまが騙されて購入されないように画像を掲載しておきますので、ご参照下さいませ。

偽物from木下

白いラベルには「沈香 真南蛮」のゴム印が捺されています。
恐らく本物に貼られていたものを剥がして貼り直したものと思われます
(ラベルだけ本物)。

反対側はこんな感じです。

偽物from木下②

横側です。

偽物from木下③

「上質な沈香(伽羅を含む)は黒くて重い」という世間の思い込みに乗じて工夫を重ねた結果の産物です。
植物の細胞組織に合成香料を滲み込ませてありますから、どこを挽いても割っても真っ黒です。
化学合成香料は揮発性が高いので、熱を加えなくても臭いを放ちますから、
本物の香木の塊に触れる機会が稀な方々は、とても騙され易く、危険です。
かつて上質の香木が産出して潤っていた地域の関係者は、約30年前から日増しに香木資源の枯渇が進行し始めたことをきっかけに、危険を冒して本物を探すより偽物を作った方が手っ取り早く確実に稼げると思い付き、必死で研究して取り組んで来たのです。

もう一つの例は、言わば「進化系のインジェクション」です。

偽物from木下①

木下さんいわく「沈香(伽羅を含む)の原木に、本物の沈香オイルを含侵させたと説明された」とのことでした。
確かに、本物と見分けがつき辛い顔付きをしています。
ところが挽いてみると、やはりジンチョウゲ科アキラリア属とは別種の植物のように思えますし、含侵させてあるオイルも、大半は化学合成香料のように感じられます。
「沈香オイル」とは、人工栽培した沈香樹を細かいチップに加工して蒸留法により取り出したものですから、その点では本物の沈香由来と言えます。
でも、人工栽培した沈香とは言え元手は掛かっていますし、大きな装置で
一週間もかけて蒸留するわけですから、手間暇も半端ではありません。
従って、更に手間暇かけて偽物作りに使うよりも、アラブ諸国にそのままの「沈香オイル」として売りさばく方がよほど簡単に換金できます。
つまり、100%の沈香オイルを含侵させていることは有り得ないと判断できますし、化学合成香料の匂いが強く感じられますから、やはりこちらも偽物と考えられます。

これら二種の他にも様々なタイプの偽物が出回っており、注意が必要です。
購入しても大丈夫かどうか、判断がつきかねる場合には、どうぞお気軽にご相談下さいませ。
写真だけでも8割くらいの確率で判断できますので。

今回は偽物の他にも阿武隈川の埋れ木(恐らく欅)(やはり木下さんから頂戴しました)も炷かせていただきましたし、カタールのアル・サーニ殿下ご愛用の沈香オイル(上品の方)や「王様のお香」(練香)も嗅いでいただいたのですが、その辺りの話は、また別の機会に触れさせていただきます。


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