10月の推奨香木は,「まぼろし」となっていた「縮油伽羅」♪

今月の推奨香木「香久山」は、早期の完売が予想されたこともあり可能な限り多くを分木出来るようにと準備したつもりでしたが、想像を遥かに上回る速さで無くなってしまい、多くの皆さまに行き渡らない結果となり申し訳なく存じています。
「稀少価値のある上質な香木をなるべく多くの愛好家の皆さまと分かち合って、聞香の醍醐味を共に享受したい」というコンセプトで始めた推奨香木の分木ですから、今後とも可能な限り継続して参る所存ですので、ご愛顧のほど、よろしくお願い申し上げます。

さて本年もあっと言う間に10月を迎えようとしていますが、季節は秋といえども残暑厳しく、夜空に浮かぶ月も、高い湿度のせいか落ち着いて愛でることができない日々が続いています。
そんな中、せめて推奨香木だけでも涼やかに!と、「まぼろしの推奨香木」から「仮銘 月の影」を復活させることに決めました。
いわゆる古木と言える来歴などは不明で、恐らく明治時代以降の渡来と考えられますが、稀少なのは、同類の事例が殆んど見られない「縮油伽羅」である点です。

堅牢・緻密な組織ながら、極めて豊かに樹脂分を湛えています
下は10数年前に割った際の断面ですが、しっとりと滑らかな感触が持続しています

以下に、本年7月に開催した「まぼろしの推奨香木」を味わう ㈡で炷き出した際のnoteへの投稿から一部を抜き出して貼り付けてみます。

**********************************歴史的名香の『縮(ちぢみ)』は文字通り木目が縮れていることからの付銘だったと推察されますが、この「縮油」とは、「圧縮されている」という意味ではないかと想像しています。
まるで地殻変動のような大きな力で圧し潰されたかのように、堅いのです。
それでいて樹脂分は豊富に含まれており、加熱した際の香気の持続力は通常の最上質伽羅を上回るほどです。
(「頼政所持の伽羅の『蘭奢待』と雰囲気が似ている」とのお言葉を頂戴し、光栄に存じ上げた次第ですが、秘めている味のバランスが、至高の名香のそれには及ばないと思っています)
僅かしか残っていないため推奨香木として紹介することが叶わないかと思いますが、「聞香会セット」には2炷分を入れてありますので、この機会に、ぜひお求め戴ければと思います。
(いずれ改めて伽羅の聞香会を企画する際には、必ず最後に炷き出したいと考えています)
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なお、堅い組織の中に芳醇に香気を湛えながら、決して強く主張することなく、飽く迄も気高く爽やかさを保ち続ける様を月の光に擬えて、次の和歌を証歌として仮銘を採らせていただきました。

天の戸をおしあけがたの雲間より神代の月の影ぞ残れる(九條良経)

適切な火加減が見つかるまで時間が掛かるかも知れませんが、他に類例が少ない「縮油伽羅」の複雑な香気のハーモニーを、どうぞお愉しみ下さいます様、お奨め申し上げます。




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