初春は「新伽羅っぽい伽羅」の分木から始めさせていただきます♪

本年の聞香会は「六国」をテーマに6回、キャンセル待ちが多くおられた会の追加開催を2回開催し、22日の伽羅(追加開催)が最終となります。
熱心な香木愛好家の皆さまのおかげで月に一回のペースをほぼ守ることが出来て、心から感謝しています。

さて最終回ですが、通常開催の際に炷き出した黒油・紫油・緑油・縮油等のいわゆる「伽羅らしい伽羅」に加えて「新伽羅っぽい伽羅」をお聞かせし、皆さまと新伽羅という木所についても考察したいと考えています。

以前にもお話しした通り、香雅堂の「新伽羅」という木所に対する解釈は、一言で表わすなら「よく解らない」です。
何が解らないのかと言えば、それは「分類の基準が理解できない」と表現することが出来ると思います。
(その背景には「ピンからキリまで伽羅は伽羅」という知見が存在します)
その上で、なぜ新伽羅という分類が生まれたのかという疑問に対して、以下のような推測が成り立つと考えています。

推測1.日本に渡来した年代が、ある年代を基準として、それより後である
    場合に「新」と付けた
    (仮定の例:1450年以降に渡来したものは「新伽羅」とした、ある
    いは五十種名香の選定以降の伽羅は「新伽羅」とした)
推測2.伽羅の基準を厳しく設定し、その基準に当てはまらないものは「新
    伽羅」とした(あるいは真那賀・羅国に分類した)
推測3.樹脂化が進行した年数や度合いが浅い伽羅を「新伽羅」とした
    (他の表現:若い伽羅、浅い伽羅)

22日にお聞かせしようと考えた伽羅は、上記の推測3に該当する典型的な例の一つとして採り上げるつもりでいたのですが、仮銘を付けるために改めてゆっくり聞香してみると、想像した以上に面白く、素敵な伽羅であることに気付きました。

春霞④

外見や重量感からは、「極めて樹脂化の度合いが低い、若い伽羅」という印象が強かったのですが、鋸で挽いた感触は意外にも手応えがあり、断面は一部を除いて色濃く上質な緑油伽羅の雰囲気を漂わせています。

春霞③

銀葉に載せると、他のどの推奨香木とも違う、特有の軽やかで華やかな香気を放ちます。
重厚感が無く、軽やかな若々しさに溢れた…その意味では新伽羅っぽい…でも意外に高度に樹脂化している珍しいタイプの伽羅は、初春を寿ぐおめでたい推奨香木として高く評価できると思い、相応しい仮銘を付けるべく和歌を探した結果、『仮銘 春霞』としました。証歌は以下の通りです。

春霞かすみなれたるけしきかな睦月もあさき日数と思ふに
                   (京極為子)(玉葉和歌集)


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