11月の推奨香木は「安心して聞ける??寸門陀羅」(インドネシア産沈香)

菊の露①

インドネシアから輸入した沈香のうち聞香に堪え得る品質を具えるものは、佐曾羅か寸門陀羅かに分類されて来ました。
(どちらも志野流香道における分類とご理解下さい。御家流香道では、全く別種の香木が用いられることが一般的です。)
いずれも「酸」を持ち味とし、産地が同じだけに香気の「匂いの筋」も似ていて、判別に苦労することが多いと言えます。
(言葉で表わせば同じ「酸」であっても、佐曾羅と寸門陀羅とでは微妙ながらも味わいに違いがあり、辛うじて判別できる場合も少なくないのです。)

そして寸門陀羅には『仮銘 うすき衣』のように鼻を突き抜けて脳を直撃するかのような刺激的な「酸」を放つものもあれば、『仮銘 春ゆく水』のように穏やかな温もりを感じさせる大人しい立ち方を特徴とするものもあって、インドネシア産の沈香は思いの他に奥行きが深いように感じます。

今回採り上げる寸門陀羅は、典型的な「カリマンタン産沈香」と言える顔をしており、樹脂化の密度は高くて品質も香気の立ち方も安定していることが特長の一つです。

菊の露②

また木目が素直に通っていて截香し易く、無駄も極めて少ないタイプです。

菊の露③

香気の特長としては、比較的に穏やかで刺激的すぎない「スモらしさ」が立ち始めから安定して持続してくれることです。
安心して『スモです』と言える寸門陀羅として、組香に用いるには最適と感じ、推奨申し上げます。
火加減が強めの場合、「酸」に加えて「苦」(少々)や「鹹」(少々)も感じられますし、もちろん木所に特有の「甘」も味わえる、とても重厚・濃厚で上品な香木だと思います。

藤原俊成の和歌
山人の折る袖にほふ菊の露うちはらふにも千代は経ぬべし
                          (新古今和歌集)
から、『仮銘 菊の露』と採らせて戴きました。


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