古伽羅の「仮銘 過ぐる春」が、いよいよ3月の推奨香木として登場します♩

先日開催の聞香会「さまざまな古木を聞き比べる」でデビュー?を果たした古伽羅は、元々無銘のままに永い歳月を経ていました。
あらかじめ触れていた通り、古い香木にもかかわらず比較的に多く残っていることもあり、創業40周年を機に、愛好家の皆さまに一部を分木させていただこうと考えました。

かなり使われた形跡が見られますが、無銘のままで、不思議です

この香木が日本に渡来した年代は不明ですが、恐らく江戸時代の安永4年頃には、他の古伽羅『志ら雪』などと共に某家に所蔵されていたと思われ、その後、持ち主に変遷があったことが、添えられたメモ書きから伺えます。
香木の特徴につきましては、聞香会当日のリポートに掲載した記事を以下にコピーさせていただきます。
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(中略)
この伽羅は、いつの時代のことか判りませんが包に「吟味向」と墨書されていて、とても興味深く感じました。
48匁、つまり180gほど残っていた時代の所有者が「伽羅」と判定していたものを、その後(恐らく明治か大正時代)の所有者が「伽羅なのか?」と疑いを持っていたらしいことが窺えるのです。
加熱してみると、その気持ちが手に取るようにわかります。
『これは、伽羅だと気付かない人が多いだろうなぁ~…』という感じ。香木
としては間違いなく伽羅と判断できるのですが、立ち始めから中ほどくらいまでは伽羅らしさが感じられづらく、殆んどの香人は「真那賀」と聞かれるだろうと想像できます。
火末に向かっていきつつ、ようやく伽羅らしい「甘」、つまり艶やかな曲を持たない「甘」を放ち始めるのです。
当初から真那賀・新伽羅・羅国の何れかに当てはめられそうな香木ですが、それを「敢えて伽羅と判じた当時の所有者の見識を讃えたい」などと偉そうに感心する次第です。
(後略)
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以上の「立ち方」の特徴に関しては、他の香木と同様に、気象条件や加熱の温度等によって様々に変化するのですが、樹脂化の密度が濃くないタイプゆえに、火加減の設定による変化の妙味が味わい易いと言えるかと思います。

樹脂分が濃くて粘り気を感じさせるタイプではありません
聞香会セットに入れるために截香した際の写真
木肌の風合いや色味が、いかにも古木の雰囲気を醸し出しています

堂々とした、いわゆる「伽羅らしい伽羅」とは異なるタイプの伽羅ですが、『志ら雪』・『浪花芦』・『春雨』・「仮銘 花の通ひ路」・「仮銘 夢路」などと同様に、古木ならではの趣を堪能していただけるものと考えて、推奨いたします。
分木に備えて「仮銘 過ぐる春」としましたが、証歌は以下の通りです。

吹く風の音に聞きつつ桜花めには見えずも過ぐる春かな 
                    (村上天皇)(玉葉和歌集)

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