8月の推奨香木は「喉の奥に絡みつくような! 緑油伽羅」

前回に触れた通り、8月は『仮銘 月待つ空』を推奨します。
縮油伽羅『仮銘 月の影』と同様、残り少ない塊ですが、これほど力強く威風堂々たる緑油伽羅は他に類例が無いため、敢えて採り上げた次第です。

月待つ空①

何十年前に輸入されたものか判明していませんが、木肌の様子からして昭和かそれ以前の時代に渡来したものと推察されます。ところが、鋸で挽くと、直ちに樹脂分が滲み出します。
恐らく採取されてから百年近い歳月を経ていると思われるにも拘らず、細胞組織に瑞々しいまでに樹脂分を湛えている様子には、信じ難い驚きを感じます(『仮銘 こり咲く梅』や『仮銘 東雲』にも同様の現象は見受けられますが…)。

月待つ空②

香気の内容も立ち方も他の緑油伽羅とは異なりますが、その特徴の違いを言い表すのは困難で…
敢えて申し上げると、冒頭に述べたように「力強く威風堂々たる緑油伽羅」ということになります。
その昔、山本霞月女史の薫陶を受けられた或る香人から『喉の奥に絡みつくような伽羅を探して』と依頼されたことがありましたが、この『仮銘 月待つ空』は、まさしくそのような伽羅と言えます。
仮銘は、以下の和歌から採らせて戴きました。

山の端の月待つ空のにほふより花に染むくる春のともし火(前中納言定家)

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