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プリンセスのほうのメルヘン。

不足しているメルヘンを補うため、福島県いわき市に向かった、絵本作家の山田。
なぜならいわき市に「メルヘン屋」というお店が点在していると聞いたのです。
その名が掲げられた2つの店舗にいったものの、売っていたのはメルヘンはなく、大量の婦人服や日用品でした。

メルヘンが購入できなかった悲しみを、いわき湯本温泉で癒し、ぐっすり眠って朝を迎えました。
今日も「メルヘン屋」に行く予定です。
でも昨日までの「メルヘン屋」とはちがいますよ。
店の名は、

「princessメルヘン屋」

プリンセス。
お姫様用のメルヘン屋です。
ティアラとか、ひじまである白い手袋とか、何層にもなっているふんわりしたロングスカートとかを売っているにちがいない。
毒林檎の解毒剤とか、ガラスの靴の補修剤とかもあるかもしれません。

お店につくと、赤いテント屋根に、赤い柱に、赤いドア。エントランスには色とりどりの植木のお花。昨日までのスーパーに併設されていたメルヘン屋とは異なります。
しかもドアには、こんなメッセージ。



楽しみますとも!

店内に入ってみると……
おや、おんなじだ。
婦人服、肌着、靴下、日用品などがところせましと。

いや、ちがう。
奥に「プリンセスコーナー」があります!
そこには、ピンクを基調としたお花柄の雑貨が集められていました。バラの花が描かれた、スリッパやお玉やバスマットなどの華麗な日用品がところせましと。
ん? 西洋風のお人形さんのとなりに、ロボもいる。なぜだ。
世界観にくらくらして店を出ると、窓にはこんな貼り紙。


プリンセス待望のひざあて。やっぱりカオスなメルヘン屋。なんて楽しいんでしょう。もう大好き。

メルヘン屋でプリンセス気分を満喫したあとは、「いわき・ら・ら・ミュウ」へ。
海の近くにある、いわきの観光・物産の発信基地。海鮮市場ではその場で牡蠣をちゅるっと食べることができたり、バーベキューを楽しんだりできます。レストランも海鮮だらけ。

おみやげさんで、私が手にとったものはこちら。


「のりピー」
味付け海苔に、くだいたナッツがまぶしてあります。
小袋を買って食べてみたら、マンモスおいピー!!!
あわてて店にもどり、小袋と大袋を大量に買いました。いろんな人に食べさせたり差し上げたりしていますが大好評です。

「ら・ら・ミュウ」のおとなりには、東北最大級の水族館「アクアマリンふくしま」がデデンと建っています。入口手前に、入場券なしで入ることができるショップがありました。いろんな水族をモチーフにしたグッズのなかで、とくにかわいかったのがカワウソグッズ。
アクアマリンふくしまは、ユーラシアカワウソを飼育、繁殖し、生息環境を整えた施設が受賞したこともあるそうです。

カワウソといえば、メルヘン屋で、こんな靴下を買ったのでした。


前回につづき、この靴下で、メルヘン修行に励みたいと思います。

『カワウソのパンや』

川の近くに、カワウソのパンやさんがありました。
店先には『カワウソのパンや』という看板があり、お店に入ると、棚いっぱいにパンが並んでいます。
棚には、「あんぱん」「チョコパン」「クリームパン」「ジャムパン」というふうにパンの名前が書かれていて、お客さんは好きなパンをトレーにのせてレジに持っていきます。

カワウソのパンやさんは、ふたりのこどもの、お父さん。
いらずらざかりの男の子の兄弟です。
お父さんは、毎日パンを焼きながら、ふたりの世話にも手を焼いています。

ある日、お父さんは、ふたりを呼びました。
「お父さんは、カバさんのところに配達にいってくるよ。留守番をしてくれるかい?」
ふたりは「いいよ!」「まかせて!」と返事をしました。

お父さんは、カバさんにパンを配達して、お店にもどってきました。

「ただいま。かわったことはなかったかい?」
「ないよ!」
「お客さんはきたかい?」
「きたよ!」
「誰だい?」
「カエルさんと、アヒルさんと、ワニさんがきたよ」
「そうかい。かわったことは、なかったんだね」
「ないよ!」
「よかった。留守番ありがとう。川であそんでおいで」

ふたりがいなくなってしばらくしたところで、お父さんは「うん? なにかおかしいぞ」と思いました。
棚をよくよく見ると、パンの場所がぜんぜんちがうではありまんか。
「あんパン」のところに「チョコパン」、「クリームパン」のところに「ジャムパン」。
ふたりがいたずらしたのでしょう!

「こりゃ大変だ! お客さんは、中身のちがうパンを買っていってしまったにちがいない」
お父さんは、あわてて店をしめて、カエルさんとアヒルさんとワニさんのところにいきました。
「ごめんなさい。パンの中身がちがっていませんでしたか?」

カエル「ちがっていたけれど、それが何か?」
アヒル「ええ、ちがうと思っていましたよ」
ワニ「だって、そう書いてあったもの」

誰も怒っていません。それどころか、クスクス、ニヤニヤと笑っています。
お父さんは、首をひねりながらお店にもどりました。
店先の看板をみて、びっくり。それから「なるほど」と思いました。

看板から「カ」と「ワ」が消えていたのです。
これもふたりのいたずらでしょう。
「まったく、今日はこっぴどくしかってやらなくちゃ」
でも『ウソのパンや』になっていたおかげで、お客さんに怒られなかったので、ちょっとよかったな、と、ちょっと思いました。
ちょっとだけですよ。

おしまい。

(福島の旅、つづきます)

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