見出し画像

古代ローマ風呂からメルヘンはしご。

そのころの私はたいそうくたびれておりました。
元気があればなんでもできるけれど、元気がないとなんにもできないし、ましてやメルヘンのことなぞ考えられず、心にメルヘンの灯火がなければ、メルヘンな物語がつくれるはずがありません。絵本作家のはしくれとして、これじゃあいけない。メルヘン脳になるために、まずとりもどすべきは健全な肉体です。

そうだ、ローマにいこう。
ローマの温泉で、身体を整えよう。

私は東京都小平市に向かいました。
なぜならそこにローマがあるからです。

重い体をひきずり、天然温泉「テルメ小川」にたどりつきました。
女湯に足を踏み入れた瞬間、もうそこは古代ローマの公衆浴場。露天風呂への扉をあけると、重厚でロマンティックなパティオ(広場)が広がります。石像の噴水から湧き出るのは、うす茶色の天然温泉。熱くもぬるくもない快適な温度の西洋の泉に、体を沈め、さえぎるもののない空をあおぎます。

「テルメ小川」のオープンは2000年。映画「テルマエロマエ」の公開が2012年ですから、日本に古代ローマの温泉文化が広まるよりずいぶん前にできていたんですね。パレオを巻いて入るトルコの伝統的な温浴「ハマームレスト」や、古代ローマ式の低温ハーブミストサウナ「テルマリウム」もあります。

このテルマリウムが私は大好きなのです。ふつうのサウナは熱くて苦しくて苦手なのですが、ここはちょっと熱いくらいで、ミント系の蒸気はもうもうに充満していても苦しくありません。10人も入れない小さな円形の室内は、床も椅子も壁もカラフルなタイルで、お花畑のよう。マダムたちとティータイムにハーブティーをいただくような気分で、スチームサウナを楽しめるのです。

パティオの泉 ⇆ テルマリウム ⇆ 室内のぬるい炭酸泉。
これを繰り返すうちに、皮膚も内蔵も潤って、体が軽くなってきましたよ。
ローマに元気にしてもらったので、ご近所のメルヘンをハントしにいくとしましょう。

車を少し走らせたところに、2軒のメルヘンを発見しました。

まずは、東久留米市にある「焼きたてパンとクッキーの店メルヘン」へ。
団地の横にある、ちんまりした素朴なパン屋さん。


名物プリンパン。近所の公園で食べました。


ライオンサブレ、80円。


袋についた食パンさんのシールが、なんともいえない良いお顔をしてらっしゃる。近くの作業所にあった看板があんまりかわいいので、おことわりをして写真をとらせてもらいました。フォントがたまらんです。




もうひとつのメルヘンは、東村山市の「リサイクルの店メルヘン」。



婦人服や雑貨のリサイクル品とは別に、手芸作家さんのてづくりコーナーがあって、そこにくぎづけに。巾着袋やティッシュケースなどのなかから吟味のうえに購入したのが、ソーイングセット、250円也。



ひらくと……



縫い針が1本、マチ針が1本、安全ピンが1本。

ふたつのお山をひっぱってみると……



うさぎさーん! 3色の糸が、胴回りにぐるぐるっと巻かれています。おしりの切れ目からしっぽもぴょん。一生カバンの中に入れておこう。

ライオンさんとうさぎさんのおかげで、メルヘンレベルを上昇させることができました。またくたびれたら、小平の古代ローマにいくことにします。

注)「テルメ小川」、古代ローマ風なのは女湯だけで、男湯のほうは和風の岩風呂です。以前は入れ替え制だったそうですが今は固定に。お花柄タイルの円形スチームサウナは、おじさんたちには物足りないし気まずかったのかもしれませんね。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?