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アリエッティとしろくまちゃんのおかげでメルヘンをとりもどす。

衣食足りてメルヘンを知る、とはよく言ったもので、心に余裕がないとメルヘンのことも考えられなくなりますね。
現実世界の波にもまれ、呼吸すらも忘れる日々を送っておりました。荒波がさざなみになってきたころに、積み重なっていた冬服を洗濯し、春物のクラゲ柄のワンピースをずっぽりかぶり、炊飯器いっぱいに米をたき、小分けして冷凍し、炊飯器に残ったほかほかのごはんに納豆をかけて食べていたら、ふと思い出したのです。

あれ、私は何らかの修行中の身ではなかったっけ。
そうだ、メルヘンだ。
メルヘン?
メルヘンってなんだっけ。
ああそういえば私は絵本や児童書のお話しをつくる人だった。それなのにメルヘン成分が足りなくなっていたから、メルヘンの修行をしてたんだった。

メルヘンスイッチを再び入れるときがきましたよ。
メルヘンのメから、またはじめていくとしましょう。
思い出そう、メルヘンを。とりもどそう、メルヘンを。もどりメルヘン。

いつぞやの私はメルヘンを求めて、新宿区の戸山団地にある喫茶店「メルヘン」におじゃまして、ホットケーキをいただきました。そして団地の商店で赤いタータンチェックのダイエットスリッパを買い、クラゲの親分みたいなモニュメントに腰かけ、標高44mの箱根山にアタックし、穴八幡宮で「どうか神様、私にメルヘンをお恵みください」と手を合わせたのでした。

穴八幡宮からてくてく歩くと、本屋さんがありました。



新書も古書もセレクトが好みすぎて、時がたつのを忘れ、本棚をすみからすみまで見回しました。絵本も雑貨も吟味され、ドリンクも飲めるようになっています。全部の棚を見終わったときに、カウンターの中にいる男性に思わず声をかけました。
「すてきなお店ですねぇ」

古本の棚から私が選んだのは、こちら。



ジブリアニメ「借りぐらしのアリエッティ」の原作本。
私の書く児童書「山田県立山田小学校」シリーズにも、えんぴつほどの背丈の用務員のおじさんが登場します。百葉箱に住み込みで働くそのおじさんは、生活やサバイバルの術に長け、小学生男子たちから絶大な支持を得ています。
「床下の小人たち」はお恥ずかしいことに未読でしたが、きっと間接的に影響を受けているのだと思います。メルヘンのメから学ばねば。

しかも、こんなかわいいオマケがついてきましたよ。



小学校の図書室で「小さなスプーンおばさん」を読んでいた少女の頃を思い出しました。「しおり」大切に使おう。

本屋さんを出て地図をひらくと、気になる地名が。
「面影橋」ですって。
なんとも物語を感じる橋の名前。メルヘンというより、ロマンチック。どんな面影があるのでしょう。
たどりつくとそこは、コンクリートの川にコンクリートの橋がかかってました。川の先に見えるのは巨大なビックカメラ。赤いネオンが夕暮れどきの川面に映ります。
逆さビックカメラ。


メルヘンからもロマンチックからも遠ざかってしまいました。メルヘンにもどりたい。

面影橋から高田馬場駅まで歩く道すがら、トイレにもいきたくなったのでふらりとファミマに寄りました。入ってびっくり。小説や漫画や雑誌や絵本の本棚がずらりと並んでいます。コンビニと書店とイートインスペースが一体となっているのです。こんなのが近所にあったらうれしいなぁ。

入ってすぐの棚に、絵本が置かれていました。



左下にあるのは、超ロングセラー「しろまちゃんのほっとけーき」。
そうだ今日の散歩は、喫茶店「メルヘン」のホットケーキからはじまったのでした。

もどりメルヘン。

まさかのコンビニでメルヘンをとりもどすことができました。ありがとうファミリーマート新宿戸塚警察署前店さん。
大都会新宿にも、メルヘンはありました。
メルヘンのアンテナたてて、また修行にはげんでまいります。


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