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山田古形の小説

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山田古形が書いた小説の一覧です。楽しいヘンテコ話がたくさんあります。
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#月

【小説】ミツキさんの満ち欠け

 首から上に頭がない。  ミツキさんの変わり果てた姿を遠目に見ながら、私は身を震わせた。店内の冷房が効きすぎてちょっと寒いからだ。  まだ夏の名残を感じる時期とはいえ、もう少し厚着でもよかったと悔やみつつ、ややこしく入り組んだ本棚の間を抜けてミツキさんの方へ近づく。  市内でも有数の広さと迷路っぽさを備えた書店の一画に、四角く区切られたイベント用のスペースがある。テーブルやイス、音響機材、有名出版社のマスコットキャラのどでかいぬいぐるみ等々が設置されていて、今日この後開催され