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山田古形の小説

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山田古形が書いた小説の一覧です。楽しいヘンテコ話がたくさんあります。
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2022年5月の記事一覧

【小説】菓子盆上の天

 目を覚ますと私は菓子盆の上に寝転がっていた。  身を起こして周囲を見る。鮮やかな朱に塗られた円く広がる底面、それを囲むようにしてなだらかに反り上がる縁はまさに、幼少の昔日から連れ添った愛用の菓子盆に他ならない。健やかなる時、病める時、小腹の空いた時、何時も私はこの盆に菓子を並べ思うさま貪ったものであった。  しかしこれほど盆は大きかったであろうか、これほど私は小さかったであろうか。大福でもプチシューでもなく、今この盆上に並ぶ菓子は私であった。  これはどうしたことであろう。