マガジンのカバー画像

山田古形の小説

27
山田古形が書いた小説の一覧です。楽しいヘンテコ話がたくさんあります。
運営しているクリエイター

2021年4月の記事一覧

花嵐散歌

「春の、うららの、ぶぼぼぼぼお」  張り上げた歌声が突然の風に遮られ、早坂はぎょっと口を閉じた。  辺りを見回すと、合唱部員たちがわあわあと悲鳴を上げながらステージ上を右往左往していた。大量の桜の花びらが風に巻かれ、部員たちを追いかけ回すように舞い踊っている。  公園の一画にあるこの野外ステージの周囲には、多くのソメイヨシノが立ち並んでいるが、それら全てが一斉に散ったかのような猛烈な花吹雪だった。早坂はポケットからスマートフォンを取り出し、眼前の光景を撮影しようと試みたが、手