マガジンのカバー画像

山田古形の小説

27
山田古形が書いた小説の一覧です。楽しいヘンテコ話がたくさんあります。
運営しているクリエイター

2020年10月の記事一覧

花なし花見の始め方

 頭上に広がる桜の枝を眺めながら、小木野が手元の紙コップに唇をつけると、砂糖たっぷりのホイップクリームを思わせる濃い甘味が口内へ流れ込んだ。  コップの中身を一息に飲み干し、小木野は「ふほう」と気の抜けた声を漏らした。レジャーシートに置いた1.5リットルサイズのペットボトルを開けて、こぽこぽとコップに液体を注ぎ足す。 「小木野さん? 何してるの?」  蓋を閉めて二杯目に移ろうとしたところで、背後から訝しむような声がかかった。  小木野は頬の筋肉をへんにょりと緩め、コップ片手に