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風に乗って飛んできた白いポリ袋に視界を塞がれ、笠野絵真は「もげ」と間の抜けた声を上げた。 ポリ袋はそのまま絵真の顔に張りつき、即席の仮面となった。袋からはほんのりと柚子のような香りが漂い、絵真の鼻腔を微かに刺激する。 絵真がもげもげと呻きながら袋を引き剝がすと、香りは吹き荒ぶ風にかき消えていった。 はあと荒い息を吐き、絵真は手に持ったポリ袋を睨むように見た。ばさばさと風に揺れる袋の表面には、黒地に朱色の混じった翼を広げ、両手に瓶を掲げて踊る烏天狗の絵が印刷されていた。